映画のワンシーンで未来を現実化

ゴールを設定した後に重要なのは、そのゴール側の「臨場感」を高めることです。
臨場感とは、未来のビジョンがまるで今ここで現実に起きているかのように感じられる度合いのことです。
人間は同時に二つの現実を強く感じることはできません。
現在の状況とゴール達成後の未来がせめぎ合う中で、より強く感じられる方が自然と自分の言葉や行動を導きます。
だからこそ、現状よりもゴールの臨場感を意識的に強化する必要があります。

心理学では、私たちが「今、何を現実と感じるか」をまとめる全体像(ゲシュタルト)を一度に一つしか保持できないとされています。
現状の影響が強いと、努力しても元の習慣に戻りがちです。
しかし、ゴールの臨場感が優勢になると、視点、言葉の選び方、行動、環境の整え方が自然と未来志向に整います。
これは根性で押し通す話ではなく、引力の方向を変える話です。

ただし、ゴール側の臨場感は簡単には立ち上がりません。
ここで役立つのが、達成後の状態を“映画のワンシーン”として描く方法です。
どこで、誰と、どんな表情で、どのように振る舞い、何をしているのか。
光の色や音、触感、香り、声、言葉など、五感を活用してシーンを具体化することで、抽象的なビジョンが生き生きと動き出します。

旅行の計画を立てるときを思い出してください。
ガイドブックを読み、地図で位置を確認し、現地の文化を調べ、宿や移動手段を決める。
そうすることで、まだ行っていないのに、まるで行ったことがあるかのように感じられます。
ゴールでも同じことをします。
関連する情報を集め、具体的な場所や人をメモし、必要なスキルや道具を試し、カレンダーに“未来の予定”として仮置きします。
情報が具体的になるほど、未来はより実感を伴います。

バランスホイールを思い出しましょう。
仕事、お金、健康、家族、学び、趣味、貢献など、人生の主要な領域を俯瞰し、それぞれに小さな達成シーンを用意します。
例えば「仕事の成功」を具体化するなら、「健康的な朝の散歩」「家族と食卓を囲む時間」「週末の学び直し」なども同じように描きます。
各領域が明確になるほど、全体として未来の引力が強まり、反動やゆがみが起こりにくくなります。

臨場感は一度で固定されるものではありません。
朝の数分で未来のシーンを思い描き、日中は一つの行動を未来志向で選び、夜にその日の一コマを記録します。
特定のペンや香り、音楽などの物理的な“トリガー”を用意すると、触れるたびに脳がシーンを思い出しやすくなり、臨場感は徐々に強まります。

描くことに行き詰まったときは、まず自分の活躍を描こうとせず、環境から始めるのがポイントです。
最初に周囲の風景を描き、その後にそこにいる人々を描写し、最後に自分の言葉を加えます。
現状から始めても問題ありません。
会議室が難しいなら、近所のカフェでも構いません。
小さな現実感からスタートし、毎日少しずつディテールを増やしていきましょう。
焦りを感じたら、深呼吸して「今日はドアノブの感触を描けた。それで一歩前進」と考え直します。
臨場感は積み重ねるもので、崩さずに積み上げることが大切です。

最終的に、臨場感を高めることは、自分を無理に押し進めることではありません。
未来の自分に少しずつ近づき、自然とその選択をするように自分を導くことです。
映画のシーンを毎日少しずつ編集し、全体のバランスを取りながら、現状を超えた基準で今日の一歩を選びましょう。
肩の力を抜いて、静かに進むことが大切です。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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