ゴールを設定することは、夢を実現するための最初のステップです。
しかし、「一度決めたゴールは変えてはいけない」というルールは存在しません。
むしろ、成長に応じてゴールを何度も見直すことができると考える方が、人生はより軽やかになるでしょう。
「せっかく決めたゴールを変えるのは、途中で諦めるようで良くないのでは」と思う人も多いかもしれません。
しかし、ゴールを変えることと諦めることは全く別物です。
「以前決めたゴールと違うから」と自分の本音を押し殺してしまうと、心のどこかに不満を抱えたまま努力を続けることになります。
重要なのは、「今の自分にとって本当に心から望むゴールかどうか」です。
成長することで見える世界が変わり、それに伴って目指すべきゴールが変わるのは自然なことです。
一度立ち止まって、自分のゴールを見直してみましょう。
その際に自問してほしいのは、「これは本当に自分がやりたいことなのか」という点です。
私たちが「ゴール」としているものの中には、親や教師、会社、社会の価値観から無意識に刷り込まれたものが含まれていることがあります。
例えば、「良い大学に行きなさい」と言われ続けた結果、「とにかく偏差値の高い大学に入ること」だけがゴールになってしまうことがあります。
また、「安定が一番大事だ」と繰り返し聞かされることで、「本当は別のことをしたいのに、安定している職場だから我慢しよう」と自分の気持ちを後回しにしてしまうこともあります。
一見すると、どれも正当なゴールに見えるかもしれません。
しかし、「自分が心から望んでいるかどうか」という視点で見直すと、「本当はそんなにワクワクしていない」「言われた通りに選んだだけかもしれない」と気づくこともあります。
そんなときは、「今の自分に合ったゴールに更新してよい」と自分に許可を与えてください。
ゴールを見直す際には、いくつかの視点が役立ちます。
一つは、「そのゴールを思い浮かべたとき、心が軽くなるか、重くなるか」という感覚です。
考えただけで少し胸が高鳴ったり、「もし実現したら楽しそうだな」と自然に想像が膨らむなら、そのゴールはあなたの「本当にやりたいこと」に近いでしょう。
逆に、「ちゃんとやらなきゃ」「失敗したらどうしよう」という緊張や不安ばかりが強くなり、どこか義務感が先に立つなら、「やらなければならないこと」の色合いが濃くなっているサインかもしれません。
もう一つは、「そのゴールは現状の外側にあるかどうか」というポイントです。
今の延長線上で、時間をかければ何とか手が届きそうなものは、現状の内側のゴールです。
人生を大きく変えるほどのインパクトは生まれにくいものです。
一方で、「どう達成するかは分からないが、実現すれば本当に嬉しい」と感じるゴールは、現状を超えたところにあります。
方法が不明だからこそ、新しい情報が目に入り、異なる行動を選ぶきっかけとなります。
この視点で見直し、「何か違和感がある」「本当は別のことがしたい」と感じたら、柔軟にゴールを更新していきましょう。
ゴールを変えることに抵抗を感じる人もいます。
「ゴールを変えるのは、自分には無理だと認めることではないか」と考えるからです。
しかし、ゴールの更新は諦めではありません。
むしろ、「今の自分の理解や価値観が深まったから、より適したゴールを選び直す」という前向きな行動です。
例えば、最初は「とにかく年収を上げること」がゴールだった人が、経験を積むうちに「好きな分野で人の役に立ちたい」というゴールに変わることがあります。
また、「役職を上げること」にこだわっていた人が、「自分の時間や家族との時間も大切にしながら働く」という新たなゴールを持つこともあります。
これは、自己効力感が下がったのではなく、自分の本音に対して誠実になった結果です。
「今の自分なら、もっと自分らしいゴールを選べる」と感じてゴールを変えるのは、自信のなさではなく、自分への信頼の表れです。
私たちの脳には「スコトーマ」と呼ばれる心理的な盲点があります。
これは、膨大な情報の中から自分にとって重要なものだけを選び取るためのフィルターのようなものです。
例えば、新しい車が欲しいと思い始めると、街中で同じ車種が目につくようになります。
また、「将来は海外で働きたい」と意識し始めた人が、急に留学や海外就職の情報に敏感になったり、海外で活躍している人の話が気になったりすることもあります。
これは、あなたの中で「何を重要とみなすか」が変わったことで、それまでスコトーマに隠れていた情報が見えるようになった状態です。
同様に、新しい学びや経験を通じてスコトーマが外れると、「そんな選択肢があることすら知らなかった」というようなゴールが視界に入ってくることがあります。
「こんな生き方があるのか」「こういう働き方をしている人もいるのか」
そんな気づきを得たとき、選べる未来の選択肢が一気に増えます。
そのタイミングで、以前のゴールがしっくりこなくなっている自分に気づくかもしれません。
そのときは、古いゴールに固執せず、新しく見えてきたゴールをじっくり考えてみてください。
私たちは人生の中で何度も異なる段階を経験します。
独身時代と家族を持った後では、守るべきものや優先順位が変わるでしょう。
20代の自分と40代、60代の自分では、興味の対象や大切にしたい価値観も変わっていきます。
何も知らなかった頃と、成功や失敗を重ねた今を比べると、「何を目指すべきか」が変わるのは当然のことです。
重要なのは、「過去に決めたゴールに今の自分を無理に合わせ続けること」ではなく、「今の自分に合ったゴールを何度でも選び直すこと」です。
人それぞれ目指すゴールも異なれば、その達成までの道のりも全く違います。
他人と比べて「自分は遅れている」と思う必要はありません。
あなた自身のペースで、あなたらしいゴールを更新していくことが大切です。
これまで見てきたように、ゴール設定は夢を実現するための出発点でありながら、「一度決めたら固定されるもの」ではありません。
今の自分が心から望んでいるかどうか。
現状の延長ではなく、その先にあるワクワクする世界を目指しているかどうか。
新しい情報や経験を通じて視野が広がり、よりしっくりくるゴールが見えてきていないかどうか。
人生のステージが変わった今の自分にとって、適切なゴールになっているかどうか。
こうした視点を持ちながら、日々自分のゴールを見直してみてください。
ゴールは、あなたの成長とともに進化するものです。
どうぞ、遠慮せず、固くならず、柔軟に。
あなたのゴールをこれからも更新し続けてください。
そのプロセス自体が、すでに「ゴールに向かって進んでいる証拠」なのだと思います。
