現状の外側へ踏み出すゴール設定

コーチングを学ぶと、「ゴールは現状の外側に設定する」」という考えに必ず触れます。
しかし、実際に自分のゴールを見直す際、それが本当に“外側”なのか、ただの現状の延長なのか、判断に迷うことがあります。

ここで言う現状とは、目に見える生活やスキルだけでなく、私たちが無意識に「自分はこういう人間だ」「この範囲が安全だ」と決めている信念や価値観、当たり前と思っていることのセット、つまり“認識の枠”(ブリーフシステム)を含みます。
現状の外側とは、その枠組みを大胆に変えないと実現できない領域です。
少しの努力や新しいテクニックを加えるだけでは届かず、自己イメージそのものが変わるような変化が必要です。

例えば、「自分は裏方タイプだから人前は苦手だ」という信念を持っていた人が、「来年、社外イベントで登壇し、指名される存在になる」という未来を選ぶとき、必要なのはプレゼン技術だけではありません。
「人前で話す自分が自然だ」という新しい信念に自分を慣れさせることが求められます。

脳は膨大な情報の中から「今の自分に関係がある」と判断したものだけを選び取ります。
昨日までの信念に合う情報は目に入りやすく、合わないものは見過ごされます。
赤い車を買った途端に街の赤い車が目につく現象を思い出せば、この仕組みが理解しやすいでしょう。
だから、現状の外側にあるゴールは最初はぼんやりしていて当然です。
むしろ「本当にできるのかな」と少し不安を感じるなら、それは認識の枠を広げている兆しと捉えてもよいのです。

一つの手がかりは、達成方法の扱いです。
もしそのゴールに至るプロセスをすらすらと説明できるなら、それは現状の延長で最適化できるテーマ、つまり現状内にある可能性が高いです。
逆に、方法が見えず、「やってみれば見えるはず」と感じる余地があるなら、外側に足を踏み出しているサインかもしれません。

もう一つは、周囲と自分の内側に起きる反応です。
外側へ動き出すと、親切心からの「危なくない?」「やめておいたら」というドリームキラー的な反応が現れやすくなります。
これは多くの場合、あなたを守りたいという善意から生じる保守的な反応です。
同時に、あなたの内側には、怖さとワクワクが入り混じった“成長の感覚”が出てきます。
もし、周囲も自分も違和感なく「すぐできそうだね」で落ち着いてしまうなら、現状の延長にとどまっている可能性があります。

ステータスコウとは、現状を少し良くする「理想的な現状」のことです。
年収を一割上げる、部署での役割を一つ増やす、資格をもう一つ取る――いずれも価値ある行動ですが、世界の見え方や自己イメージが変わるわけではありません。
現状の外側のゴールは、住む場所、使う言葉、関わる人、時間の使い方といった日常の前提が変わり、「その自分でいることが普通になる」未来の基盤を作ります。
単なる性能向上と、前提の更新。この違いを見誤らないことが、加速の分岐点になります。

まず、ゴールを「すでに達成されたもの」として書き出してみましょう。
願望ではなく、既に実現した事実として表現することで、脳はその前提に基づく情報を自然と集め始めます。
毎朝、短い未来日記として一段落更新することで、その前提がより早く定着します。

次に、未来の自分が日常的に行っている行動を、少しずつ先取りしてみましょう。
環境を未来の状態に近づけることで、行動がより容易になります。

情報の入り口も変えてみましょう。
SNSのフォローやニュースレターの購読を、未来の自分が自然に関わっているコミュニティに合わせて切り替えます。
受け取る情報が変わると、判断や行動も自然に変わっていきます。

例えば、「TOEIC九百点」は有用な指標ですが、世界の見方を変える目標ではありません。
「来年、コーチングを世界に広めるため、海外のオンライン勉強会で自分の事例を英語で発表している」と設定すれば、毎週三分の英語ライトニングトークを撮影して公開するという「使うことを前提とした」日常が生まれます。点数は結果として後からついてきます。

現在のゴールを紙に書き出し、一つずつ見直してみてください。
すぐに工程表が描けて安心感だけが残るものは、現状の延長かもしれません。
少し怖さを伴うワクワク感や、周囲からの保守的な反応があるものは、外側に向かっている候補です。
安心だけの選択から一歩視線を上げ、前提が変わる方を選び直してみましょう。
ここから景色が変わり始めます。

現状の外側のゴールは、努力の量ではなく前提の更新によって開かれます。
最初に方法が見えにくいのは正常で、怖さとワクワクが同居するのは健全な兆しです。
今日できることは2つ。
すでに叶っている前提で短い未来日記を書くこと。
そして、環境を一つだけ未来仕様に変えること。
小さな先取りが、見える世界そのものを塗り替えていきます。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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