選択をした後に「別の選択が良かったかも」と思うことは、放置すると視野を狭め、行動を遅らせる原因になります。
まず確認すべきは、別の選択をした自分は現実には存在しないということです。
過去は変えられません。
それにもかかわらず、私たちは「持っていないもの」に目を向けがちで、隣の芝生が青く見えることがあります。
ここで役立つのが、思考や感情に短い名前を付ける「ラベリング」という方法です。
ラベリングは、頭に浮かんだ考えや行動に短いラベルを付けるだけのシンプルな習慣です。
目的は善悪を判断することではなく、どこに注意を向けているかを可視化し、感情から少し距離を置くことです。
ラベルは3つあります。
ゴールに関係があるものは「T(True=真)」、関係がないものは「N(Nil=空・未設定)」、余計な雑念や感情は「D(Delusion=雑念)」です。
重要なのは、どのラベルを付けるかではなく、ラベルを付ける行為そのものが注意を整えるという点です。
ネガティブなセルフトークが続くと、「失ったかもしれない選択肢」や「できなかった理由」に意識が固定されます。
ラベリングを行うと、思考と自分を分けて観察する姿勢が生まれ、評価の基準が“いま目の前の不満”から“目指すゴール”へと移ります。
この切り替えにより、「何か方法はあるはずだ」「次はどうする?」という前向きなセルフトークが自然に戻ってきます。
抽象度が上がり、選択肢が見えやすくなります。
ミニ実験をしてみましょう。
まず、メモを置く場所を決めます。
スマホのメモでも紙でも、いつでも開ける場所なら何でも構いません。
次に、3分間だけ時間を区切り、頭に浮かぶ考えや行動に即座にラベルを付けていきます。
たとえば、ゴールに直結する作業をしているなら「T」。
気晴らしのネットサーフィンで判断が濁りそうなら「N」。
そして「あの方が良かったかも…」と考え始めたら「D」。
迷ったらとりあえずDにしておくと、手が止まりません。
3分が終わったら一言だけ振り返りを書き添えます。
「午後はDが増えたので散歩でリセット」「夕方にTへ戻せた」など、短くて十分です。
続けていくと、自己批判の時間が短くなり、Tの行動が増え、小さな達成が積み重なります。
Nに気づく精度も上がり、切り替えが早くなります。
「Dばかりで落ち込みます」という声をよく聞きますが、それは正常なサインです。
Dは悪者ではなく、発見です。
見えていなかった雑念に名前が付いたからこそ、切り替えられるのです。
「TとNの線引きが曖昧です」という場合は、迷ったらDにして先へ進み、後からTやNに更新すれば十分です。
ラベリングは、出来事をゴールの視点から再評価するための小さな手段です。
Dが現れても問題ありません。
それが見えたからこそ、「何か方法があるはずだ」「次にどう動く?」と考えることができます。
今日のわずかな時間が、明日の選択をより容易にしていきます。
あなたのゴールに向かって、静かに一歩ずつ進んでいきましょう。