私たちにとって本当に限られているものは何でしょうか。
それは「時間」です。
お金は増減しますが、時間は一方向にしか進みません。1日は24時間、つまり1440分で、誰にとっても同じで、取り消したり繰り越したりすることはできません。
コーチングの元祖である故ルー・タイスは、「人が選べないのは死ぬことだけだ」と言いました。
つまり、死に至るまでの時間の使い方は自分で選べるということです。
人生に「やらねばならないこと(have to)」は絶対的に存在しません。
少なくとも、どう使うかを自分の基準で選び直す余地は常にあります。
「時は金なり」という言葉はよく知られていますが、実際には時間はそれ以上の価値を持ちます。
例えば、根拠のない臨時収入を想像するよりも、今この30分の過ごし方を変える方が、人生の質に直結します。
平日の自由時間が1日3時間あると仮定して、その一割、つまり18分を「望む生き方に近づく行動」に充てると、1年で約110時間が新しい積み重ねに変わります。
110時間あれば、基礎英語を一巡したり、健康的な習慣を固めたり、小さな事業の基盤を作ったりすることが十分に可能です。
やらねばならないことが多い日でも、行動の一部は自分で決められます。
出勤そのものは変えられなくても、通勤の30分をニュースの流し読みから学び直しの時間に変えることはできます。
子どもの送迎は外せなくても、待ち時間にメモを取って考えを進めることはできます。
こうした小さな選択肢を見つけて選び直すことが、日常の中に「やりたいこと(want to)」を少しずつ増やしていく最も確実な方法です。
朝の30分を思い浮かべてみてください。
目覚ましを止めた後、無意識にSNSを眺めているうちに家を出る時間になってしまう朝もあれば、深呼吸を数回して、発音練習アプリを5分、軽いストレッチを5分、コーヒーを淹れながら今日の一言メモを10行書いてから出かける朝もあります。
どちらも同じ30分ですが、後者を1か月続けると、「自分が一日の主導権を握れている」という感覚が育ちます。
この感覚は、同じ出来事に出会っても受け止め方を変え、選択を変え、結果を変えていきます。
毎日のどこかで、自分に短い問いを投げかけてみてください。
まず、「この時間は誰のための時間か」。
他人の期待を満たすためだけの行動になっていないかを確かめます。
家族や仕事に向ける時間であっても、「自分の選択として引き受けている」と意識できると、同じ行動でも疲れ方が変わります。
次に「未来の自分は、今の30分に感謝するだろうか」。
30分後の快適さではなく、30日後の満足を思い浮かべて選ぶと、短期の快と長期の納得のバランスが整います。
意志の力に過度に依存しないことも重要です。
環境にちょっとした工夫を施すことで、行動を自然に始めやすくなります。
例えば、目覚まし時計をベッドから離れた場所に置くことで、起き上がらないと止められないようにする方法があります。
また、よく使うアプリをホーム画面の一番目から外すだけで、無意識のうちに使ってしまうことを減らせます。
学習ノートを開いたままテーブルに置いておけば、次に座ったときにすぐに取りかかれます。
こうした工夫は、「やる」と決める前に「やれる状態」を先に整える技術であり、意志力を節約する手段でもあります。
私たちが持つ唯一の、そして確実に減っていく資源は時間です。
だからこそ、その使い方は他人が決めた正解ではなく、自分自身の基準で選び直すべきです。
朝の5分、通勤中の10分、寝る前の15分。
これらの小さな選択の積み重ねが、「どのように生きたいか」という大きな問いへの答えを形作ります。
あなたの残りの時間は、あなた自身が選ぶことができます。
その最初の一歩は、今日のこれからの30分を、未来の自分が喜ぶ形に整えることから始まります。
