スコトーマを味方にするゴール設定

私たちは、見えていると思っている多くのものを実際には見逃しています。
これが心理的な盲点、スコトーマです。
「スコトーマが外れた」という言葉が広まることで、スコトーマ自体が悪いものと誤解されがちですが、実際にはその使い方次第で大きな力を発揮します。

人間の脳は、一度に処理できる情報量に限りがあります。
そのため、脳は重要と判断した情報を強調し、重要でないと判断したものを背景に押しやります。
これがスコトーマです。
スコトーマは敵ではなく、情報を選別するための効率的な手段と考えると納得がいきます。
ただし、強調と背景化の基準は環境や心身の状態に影響されるため、時には重要な情報を見落とすことがあります。

スポーツの世界でホームとアウェイの差が生じるのは、慣れた環境を離れると脳の選別能力が低下するからです。
照明の色、観客の声、ロッカールームの配置、ピッチの感触など、わずかな違いが積み重なると、私たちの注意は環境への適応に向けられ、重要なプレーに必要な情報が隠れてしまいます。
初めての会議室や初対面の顧客、新しいツールなど、ビジネスの場でも同様の現象が起こります。
「なぜあんな初歩的なミスを?」という経験の背後には、スコトーマによる選別の乱れがあるのです。

「見えない=悪い」と決めつける必要はありません。
むしろ、ゴールに関係のない情報を意図的に背景に押しやることで、注意や時間が自然とゴールに向かって整います。
メールの通知、SNSのアイコン、思いつきで差し込まれる雑務、根拠のない不安や自己否定の声。
これらを“見えにくくする”工夫をするだけで、日々の判断は驚くほど軽くなります。
スコトーマを操作するというより、背景に送る対象をこちらから選ぶイメージです。

まずはゴールを設定することが重要です。
次に、ノイズを物理的に遠ざけます。通知を決まった時間にまとめて受け取る、作業画面からSNSの導線を外す、会議の直前10分はメッセージを見ない。
こうした小さな“見せない工夫”が、前景と背景をはっきりと分けます。
初めての場所や状況では、環境を“ホーム化”しましょう。
会場への動線を事前に確認し、冒頭の挨拶を練習し、机上のレイアウトを毎回同じにする。
これだけで盲点は大幅に減ります。
一日の終わりには、短い振り返りを行います。
「今日、見過ぎていたノイズは何か」「逆に、見落としていた大事なサインは何か」を一行ずつ書き残すだけで十分です。翌日に“見るもの・隠すもの”の選別精度が向上します。

プレゼン直前の不安は、今この瞬間の行動には役立ちません。
直前の15分は、想定質問の要点、導入の一言、時間配分の確認といった“成功条件”だけを確認すると決めてしまいましょう。
すると、不安は自然と背景に退き、手が自然に動き始めます。

スコトーマは、どちらの立場にもなり得る中立的なメカニズムです。
ゴールを明確にし、基準を設定することで、重要なサインを具体化し、不要な情報を事前に排除します。
環境を徐々に自分に馴染むものにし、短時間の振り返りで選択の精度を高める。
このプロセスを整えるだけで、注意と行動は自然とゴールに向かいます。
ネガティブな要素を避けるために、見せない設計を事前に決めておくことが、スコトーマを味方にする最も実用的な方法です。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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