五感を使って未来のゴールを描く方法

ゴールを達成するためには、その未来を頭の中で鮮明に感じること、すなわち臨場感が重要です。
しかし、現在の延長線上にない「現状の外」のゴールほど、詳細に思い描くのは難しいものです。
ここで役立つのが、人間に備わるゲシュタルト能力です。
これは、バラバラの断片から全体像を組み立てる力で、未知の世界でも既知の感覚を“素材”として活用することで、未来の臨場感を高めることができます。

臨場感とは、まるでその場にいるかのように感じるリアルさで、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚などの五感の情報が増えるほど強まります。
「現状の外」とは、少しの努力ではなく、基準そのものが変わった新しい世界を指します。
ゲシュタルト能力は、映画の予告編だけで本編の雰囲気を想像するように、似た記憶や感覚を手がかりに未知の全体像を補う働きです。

まずは、日常で生まれるポジティブな体感を短く記録します。
大きな出来事は必要ありません。
朝、窓を開けた瞬間の冷たい空気の清々しさ、提出を終えた後の肩の軽さ、好きな人と話した後の胸の温かさ、ストレッチで体が伸びる気持ちよさ――こうした小さな感覚を、時間と一言でメモに残します。
例えば「7:05 朝の風が気持ちいい」「14:20 提出後の肩が軽い」のように、具体的な身体感覚と言葉をセットにするのがコツです。
こうして少しずつ“体感の見本帳”が育っていきます。

次に、その見本帳から使いたい体感を一つ選び、ゴールのイメージに組み込みます。
やり方はシンプルです。
まず、達成後の場面を大まかに思い浮かべます。
完璧である必要はありません。
続いて、見本帳から「これだ」と思う感覚を呼び出します。
最後に、その感覚をゴール場面の空気や音、体の重み、指先の触感に行き渡らせ、胸の奥で小さくうなずけるかどうかを確かめます。
この“貼り付け”によって、薄かった未来のイメージに身体的なリアリティが流れ込み、臨場感が一段高くなります。

例えば、転職して裁量ある働き方を望む人は、午前中に企画を仕上げ、午後は散歩しながら構想を練る自分を想像します。
そこに、朝の窓辺で感じた清々しさを重ね、送信ボタンを押す指先の軽さや、任される瞬間の胸の広がりへと感覚を行き渡らせます。
英語で登壇したい人は、ライトの下で会場と通じ合っている自分を思い描き、友人と話した後の温かさを、マイクの感触や会場のざわめきにまとわせます。
ほどけるような安心感が、「伝わっている」という空気を先取りしてくれます。

ゴールを設定する際は、可能性や確率ではなく、心が自然に向かうかどうかで決めます。
「できるか」で考えると、過去の経験や評価に基準が引き戻され、視野が過去志向に戻りやすいからです。
迷ったら「それ、やりたい?」と一度だけ自分に問い、体がわずかでも前へ出る感じがあれば採用します。

最初に直面しがちな課題は「良い感情が見つからない」ということです。
これを解決するには、大きな出来事を求めるのではなく、風の温かさや椅子の快適さ、湯気の香りといった小さな感覚に目を向けることから始めましょう。
次に多いのは「貼り付けを忘れる」ことです。これには、歯磨き後に行う、スマホのホーム画面に「貼り付け」と書いたメモを置くなど、既存の習慣に結びつける工夫が有効です。
最後に「途中で不安が湧いてくる」ことがありますが、不安を消そうとせず、隣に置いておく姿勢が助けになります。
貼り付けは感情を上書きするのではなく、追加するものです。
不安と共に進みながら、望む感覚を少し強めるだけで十分です。

日常で感じたことを蓄え、それを目標に貼り付ける――この小さな行動だけで、現状を超えた未来に身体的なリアリティが生まれます。
判断基準は常に「できるか」ではなく「やりたいか」です。
今日のわずかな時間が明日の行動を変え、行動が結果を生み、その結果がさらなる臨場感を育てます。
最後に、深呼吸を一つ。心の中で「これ、いい」とつぶやけたなら、もう始まっています。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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