小さな選択で変わる未来:焦点の力

私たちの未来は、特別な出来事によってのみ形作られるわけではありません。
むしろ、日々の小さな選択が静かに、しかし確実に未来を変えていきます。
朝、家族にどんな言葉をかけるか、仕事でどのタスクを優先するか、メッセージにどんなトーンで返信するか。
これら一つひとつの選択は小さく見えても、長い時間をかけて自己イメージや人間関係、成果に影響を与えます。

これらの選択を左右するのは、「才能」や「運」ではなく、「どこに意識を向けているか」です。
意識がポジティブな方向に向いていれば、自然と前向きな行動を選びます。
逆に、意識がネガティブな方向に向いていると、意図せず後ろ向きな行動を取りがちです。
だからこそ、何に焦点を当てるかを自分で決めることが重要です。

「焦点を当てる」という言葉は、カメラでピントを合わせることをイメージすると分かりやすいです。
カメラは、ピントを合わせた部分を鮮明に写し、それ以外は背景としてぼかします。
人の意識も同様で、重要だと思うものには細かいところまで気づきますが、重要でないと思うものは見逃しがちです。

ポジティブに焦点を当てていると、人の良いところや小さな成長、自分の変化の兆し、チャンスの種に気づきやすくなります。
逆に、ネガティブな方に焦点を当てると、欠点や失敗の可能性、過去の後悔が目につきやすくなります。
ここで大切なのは、現実そのものよりも「何をはっきり見えるようにするか」を選べるということです。
つまり、意識の向け先は自分でコントロールできるのです。

「とはいえ、問題点も見ておくべきでは?」と思う方もいるでしょう。
確かに、仕事ではリスクを見ておく必要がありますし、欠点を全く見ないのは現実的ではありません。
しかし、人間の脳はもともと危険や不安に注意が向きやすいようにできています。
これは生命を守るための仕組みで、放っておいてもネガティブに気づくようになっています。

だからこそ、日常では「あえてネガティブを選ぶ必要はない」と言えます。
コーチングで使われる「スコトーマ(心理的盲点)」という言葉がありますが、これは「意識が当たっていないので見えなくなっている領域」のことです。
この仕組みを利用して、ネガティブを意図的にスコトーマに入れ、つまりロックアウトするのです。
見えにくくすることで、普段は背景に埋もれていたポジティブな出来事が前に出てきやすくなります。

「ポジティブに焦点を当てる」と言われても、どこから始めればいいのか分からないという声はよく聞かれます。
そんなとき、最も簡単に始められるのは、「自分の良いところを見つける」よりも「周囲の人のポジティブな面を見つける」ことです。
自分に対しては厳しくなりがちですが、他人の良いところは冷静に見つけやすいものです。

例えば、同僚が忙しい中でも丁寧に説明してくれたことに気づいたら、「さっきの説明、とても分かりやすかったです」と伝えてみましょう。
家族が日常的に家事をしてくれていることに気づいたら、「いつもやってくれて助かってるよ」と声をかけてみましょう。
SNSで誰かの投稿を見て「この書き方、読みやすいな」と思ったら、いいねを押すだけでなく「こういう表現、参考になります」とコメントしてみましょう。

ここでのポイントは、褒めること自体よりも「褒めるポイントを探すために周りを見る」という行動にあります。
褒めようと思った瞬間、人は「どこが良いのだろう」と探し始めます。
つまり、探すこと自体がすでにポジティブに焦点を当てることになっているのです。
最初はぎこちなくても、3日続けると自然と「今日も何か見つけよう」という視点で人を見るようになります。これは習慣化されます。

この話をすると、「結局は気の持ちようってこと?」と受け取られることがあります。
確かにそれに近いですが、より正確に言うと、マインドをコントロールするとは「意識の向け先を自分で選ぶ」ということです。
外で起きる出来事はコントロールできません。
予想外の連絡や人の機嫌、ニュースやトラブルは、こちらの都合とは関係なく起きます。
しかし、起きたことをどう解釈するかは、こちらの側で選ぶことができます。

「これはどんな学びになるだろう」「この経験を誰かの役に立てるとしたらどう書くかな」「さっきの言い方の中にも良いところはなかったかな」といった問いを自分に投げかけると、脳は自動的にポジティブな情報を探し始めます。
これを日常的に行うと、落ち込んでも回復が早くなり、人と会うときも「この人の良いところを一つ見つけよう」と思えるので、関係が楽になります。

ここまで見てきたように、ネガティブに焦点を当てればネガティブな出来事が増えて見え、ポジティブに焦点を当てればポジティブな出来事が集まってきます。
世界そのものが変わったわけではなく、あなたのマインドが「どんな関係性を選ぶか」を決めたことで、世界の見え方が変わっているのです。
だからこそ、「人の良さを探す」「見つけたら言葉にする」「ネガティブは必要なとき以外は見ない」という小さな選択をするだけでも、あなたの世界は少しずつ明るい方向に向かっていきます。

では、改めて問いかけます。
あなたは、これから何に焦点を当てて生きていきますか。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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