Want toで人生が動き出すゴールの描き方

人生を変えたいと感じたり、日々を少しでも良くしたいと思ったりする時、その始まりは常に同じです。
それは「ゴールを設定すること」です。

日々を何となく過ごしていると、知らず知らずのうちに会社や家族、周囲の期待に合わせて生きてしまうことがあります。
しかし、本当に望む未来に進みたいのであれば、「どんな人生を送りたいのか」「どんな自分でありたいのか」というゴールを、自分の意志で決めることが重要です。

ここでは、そのゴール設定の際に大切になる「want to(本当にやりたいこと)」との向き合い方について、少し詳しく見ていきます。

ゴールを考える際、多くの人は「これだというゴールを一つに絞らなければならない」と思いがちです。
間違ったゴールを選んだらどうしよう、続かなかったらどうしようと不安になることもあるかもしれません。

しかし、むしろ逆です。
ゴールは1つや2つではもったいないのです。
まずは、自分の「want to」に従って、思いつく限り多くのゴールを書き出してみてください。

例えば、訪れたい場所、習得したいスキル、試してみたい仕事のスタイル、家族との関係、健康や生活についての願いなど、ジャンルはバラバラで構いません。
「こんなことを願っているなんて恥ずかしい」と感じるものこそ、実は本音に近いことが多いです。

平日の昼間にカフェで本を読みながら過ごしたい、子どもが大きくなっても一緒に旅行に行ける関係でいたい、会社に縛られず、自分のペースで働ける仕事がしたい。こうした少しわがままに思える願いも、一度はそのまま紙に書き出してみると良いでしょう。
ここでは、現実的かどうかは一切気にせず、「こうなれたらいいな」と素直に思えるかどうかだけを基準にしてください。

コーチングの本では、「抽象度が高いゴール」「抽象度が低いゴール」という表現が登場することがあります。
数字や期限が明確なゴールは「抽象度が低いゴール」、人生の在り方や世界観に関するゴールは「抽象度が高いゴール」と説明されることが多いです。

しかし、ゴールを考え始めた最初の段階では、抽象度を意識しすぎる必要はありません。
「これは抽象度が高いのか、低いのか」と一生懸命分類しようとすると、かえって手が止まってしまいます。

大切なのは、「それを考えると少しワクワクするかどうか」です。
やり方が分からなくても構いません。
周りからどう思われるかも、いったん脇に置いてください。
自分の「やりたいこと」に素直になる時間を、まずは自分に許してあげることが何より大事です。

多くのゴールを書き出していると、自然と抽象的なゴールが浮かび上がってくることがあります。
例えば、「イタリア旅行に行きたい」や「イタリア語を少し話せるようになりたい」といった思いを挙げているうちに、「異文化の人々とお互いを尊重し合いながら関わりたい」といった広い視野のゴールが突然現れることがあります。

このように、最初から完璧なゴールを設定しようとするのではなく、まずは数を意識してたくさんのゴールを出してみることが大切です。
その中から自然に「大きなゴール」が見えてくる方が、よりスムーズに進められます。

中には、「自分のやりたいことがよく分からない」と感じる人もいるでしょう。
何をしたいのかピンとこず、何を書けばいいのか分からず手が止まってしまうこともあるかもしれません。

そんなときには、視点を少し外に向けてみることが役立ちます。
「自分が何をすれば、誰が喜んでくれるだろう?」と考えてみるのがおすすめです。

職場では、資料を分かりやすく整理して共有することで同僚が助かるかもしれません。
家庭では、家族がリラックスできる時間を作ることで、パートナーや子どもの表情が和らぐかもしれません。
趣味で撮った写真をシェアすることで、誰かが癒されたり、「そこに行ってみたい」と感じたりするかもしれません。

このように、「自分の行動で誰かが喜ぶ場面」を想像してみると、「自分はこんなときにやりがいや楽しさを感じているのかもしれない」と気づくことがあります。
人の話をじっくり聞いているとき、難しいことを分かりやすく説明しているとき、さりげなく段取りを整えて場の雰囲気を和らげているときなど、「こうしている自分が好きだな」と感じる瞬間があるはずです。

その「自分を好きでいられる瞬間」の中に、あなたのやりたいことのヒントが隠れています。
最初は、自分の中から無理に答えを見つけようとするよりも、誰かの喜びを手がかりに、自分のやりたいことを見つけていく方が自然で、心にも負担が少なくなります。

「自分のやりたいことを見つけなければ」と力が入りすぎると、かえって視野が狭くなってしまうことがあります。
本当に自分のやりたいことなのか、周りに影響されているだけではないかと自分を疑い始めると、せっかく芽生えたものを自分で踏みつけてしまうことにもなりかねません。

そんなときこそ、「自分が何をすれば他人が喜ぶだろう」という問いが役に立ちます。
これは、自分の気持ちを犠牲にして他人のためだけに尽くすという意味ではありません。
むしろ、「誰かの喜び」という鏡を通して、自分のやりたいことを見つけていくための工夫です。

誰かから「ありがとう」と言われ、その人の顔が明るくなると、自分の心にも温かさが広がります。
この感覚は、「こうありたい」という静かな願望の表れです。
その願望を大切にしていくと、「want to(本当にやりたいこと)」が少しずつ明確になってきます。

ここで「スコトーマ」という概念が登場します。
スコトーマとは、心理的な盲点のことです。
自分の思い込みや先入観によって、実際には目の前にある情報が見えなくなっている状態を指します。

「自分には大した能力がない」「人を喜ばせることはできない」といった自己否定的な考えが強いと、周囲から感謝されていることや役立っている事実があっても、それを重要視できなくなります。
「たまたまだ」「大したことじゃない」と自分で評価を下げてしまうため、貴重な経験が心に残りません。

しかし、「どうすれば相手が喜ぶだろう」と意識を向けると、スコトーマが徐々に外れ始めます。
以前サポートしたときに「助かったよ」と言われたことや、ただ話を聞いただけで「話してスッキリした」と感謝されたこと、自分では当たり前にやっていることを「それはすごいね」と褒められたことなど、忘れかけていた記憶が蘇ります。

そのとき、「自分は思っていたほど無力ではないかもしれない」と感じられるようになります。
この小さな認識の変化が、「want to」が見え始める入り口です。
自己評価を下げるフィルターが薄くなることで、これまで意識に上がってこなかった「好きなこと」や「やってみたいこと」が、少しずつ視界に入ってきます。

最後に重要な視点があります。
それは、「他者の幸福」と「自分自身の幸福」は、本来切り離されたものではないということです。

誰かの笑顔や「ありがとう」の一言に救われた経験はないでしょうか。
自分の関わりがきっかけで、相手の表情が柔らかくなったり、少し前向きになったりしたとき、心がじんわりと温かくなる感覚があるかもしれません。

その瞬間、他者の幸福は、すでにあなた自身の幸福とつながっています。
あなたのwant toが誰かの喜びにつながり、その喜びが、今度はあなたの心の満足感を育ててくれる。
この循環が強くなるほど、ゴールは単なる「自分だけの願望」ではなく、自分も周りも豊かにしていくものへと変化していきます。

だからこそ、「自分のwant toを探さなきゃ」と一人で悩む必要はありません。
誰かの喜びや笑顔に意識を向け、その中にある自分の感情を丁寧にすくい上げていくだけでも、ゴールの輪郭は思っている以上にくっきりと見え始めます。

すべてはゴール設定から始まります。
そして、そのゴールの中心には、あなたのwant toと、誰かの喜びが静かに、しかし確かにつながっています。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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