「バイオパワー」に気づいていますか?
「バイオパワー」という概念をご存知でしょうか。少し難解に聞こえるかもしれませんが、ここでは「私たちの行動を無意識に“普通”や“常識”の枠に収めようとする力」として捉えてみましょう。
例えば、「誰かに見られているかもしれないからやめておこう」「変だと思われたくないから無難にしておこう」と感じて、自分の行動を抑えた経験はありませんか。誰かに直接禁止されたわけではないのに、自らブレーキをかけてしまう。こうした状況の背後には、バイオパワーと呼ばれる見えない力が作用しています。
日常にひそむバイオパワー
バイオパワーは特別な場面だけでなく、職場、家庭、学校、さらにはスマートフォンの画面の中でも、静かに私たちの行動に影響を与えています。
例えば、職場の会議を思い浮かべてみてください。「こうしたほうが仕事がスムーズなのでは」と思っても、「新人の自分が言うのは生意気かもしれない」「場の空気が悪くなったら困る」と考えて意見を飲み込んでしまうことがあるかもしれません。誰かに「発言するな」と命令されたわけではないのに、自分の中の「こうあるべきだ」「立場をわきまえなければ」という感覚が行動を制限しています。
家庭でも同様のことが起こります。子どもの頃から「みんなと同じようにしておきなさい」「そんなことをしていたら変な目で見られるよ」と言われ続けると、「周りから浮かないようにしよう」という感覚が身についてしまいます。気づけば、自分の本音より周囲の反応を優先するのが当たり前になっていることも少なくありません。学校でも、「手を挙げて間違えたら恥ずかしい」と感じて、本当は質問したいのに黙ってしまうことがあります。
SNSの世界も、バイオパワーが強く働く場所です。投稿内容を考えるときに、自分が本当に伝えたいことよりも、「いいねがもらえそうな内容」「炎上しにくそうな意見」を優先してしまうことがあります。画面の向こう側にどんな人がいるのか分からないのに、「誰かの視線」を意識して、自分の表現を小さくまとめてしまうのです。
このように、職場、家庭、学校、SNSといった日常のあらゆる場面で、私たちは知らないうちに「見えない誰か」の目線や「こうあるべきだ」という空気に合わせて行動をコントロールしています。これが、日常に潜むバイオパワーの働きです。
「常識」や「普通」は本当にあなたの味方か
バイオパワーが現れるとき、よく耳にするのが「それは常識だよ」「普通はこうするよ」といった言葉です。一見すると親切なアドバイスのように思えますし、社会のルールや基本的なマナーを守るために常識が役立つ場面も多々あります。
しかし、その「常識」や「普通」が、あなたの行動を制限する鎖になることもあります。「変わったことをしないほうが安全だ」「目立たないほうが楽だ」という考えが強くなりすぎると、本当にやりたいことがあっても、最初の一歩を踏み出せなくなってしまいます。
誰かに「それは常識じゃないよ」と言われたときや、自分で「普通はこうだよな」と思いそうになったときこそ、一度立ち止まって考えるチャンスです。その考え方は、自分が心から大切にしたい価値観に基づいているのか。それとも、ただ周りに合わせるためだけに採用している「便利な基準」に過ぎないのか。少しの間、自分に問いかけてみるだけでも、見える世界は変わっていきます。
「Not Normal」であることが、あなたの個性になる
コーチングの世界では、心からやりたいこと、つまり「Want to なゴール」を大切にします。しかし、バイオパワーが強く働くと、「やりたいこと」よりも、「怒られないこと」「浮かないこと」「変だと思われないこと」が優先されてしまいます。
けれども、本来のあなたは「普通の枠」に収まるために存在しているわけではありません。人と違っていていいし、むしろ違っているからこそ、その人だけの価値が生まれます。
周りの同年代が安定した会社に勤めている中で、「海外で仕事がしたい」「自分のサービスを立ち上げてみたい」と感じる人もいるでしょう。その選択は、周りから見れば「ちょっと変わっている」ように映るかもしれませんが、あなたの人生のゴールは、あなた自身が選んで良いものです。
「みんなと同じでいなければいけない」という発想から、「自分はどう生きたいのか」「どんな人生がしっくりくるのか」という問いに視点を移したとき、バイオパワーの影響から少しずつ解き放たれていきます。人と違う道を選ぶことは、決して間違いではありません。むしろ、「Not Normal」であることが、あなたの個性そのものなのです。
バイオパワーの認識から始まる人生の変革
私自身、バイオパワーという概念を知り、その存在を意識し始めてから、日々の選択が少しずつ変わっていきました。それまでは「波風を立てない方がいい」「反対されない道を選ぶ方が楽だ」と考え、やりたいことよりも「無難な選択」を優先していたように思います。
ある時、「この選択は本当に自分の望みなのか」「それとも、他人の目を気にして選んでいるだけなのか」と自問しました。すると、驚くほど多くの場面で、周囲の評価や雰囲気を優先していたことに気づいたのです。そこから少しずつ、「本当はどうしたいのか」「自分のWant to は何なのか」を自分に問いかける時間を増やしていきました。
もちろん、すべての選択を一晩で変える必要はありません。むしろ、急にすべてを変えようとすると苦しくなってしまいます。最初の一歩としては、「今の自分の中で、バイオパワーが働いていると感じる場面がどこにあるか」を知るだけでも十分です。「あ、今、“普通”に合わせようとしているな」と気づけた瞬間に、すでにその力に飲み込まれず、自分の意志で選び直す余地が生まれています。
認識することでコントロールが可能に
バイオパワーは目に見えないからこそ厄介な存在です。しかし、「こういう力がある」と認識できれば、もはや一方的に支配されるだけのものではなくなります。自分の内側で何が起きているのかに気づけるようになれば、少しずつ距離を取り、自分のペースで付き合っていくことができます。
日常の中で、「今の選択は本当に自分のWant to から出てきたものだろうか」「誰かの視線や常識を気にして、本心を脇に置いていないだろうか」と問いかけてみてください。その問いを投げかけるたびに、バイオパワーの影響は少しずつ弱まり、あなた自身の選択が強くなっていきます。
社会生活を送るうえで、まったく空気を読まないというのも現実的ではありません。けれども、「空気を読むこと」と「自分を押し殺すこと」は別の話です。状況に配慮しながらも、自分の気持ちや価値観を大切にすることはできますし、そうして良いのです。どんな場面でも、あなたの人生の主導権は、最終的にはあなたが握っています。
バイオパワーの認識から始まる人生の変革
あなたの人生の物語を紡ぐ主役は、他でもないあなた自身です。人はそれぞれ異なる環境で育ち、異なる価値観を持ち、得意なことも異なります。同じニュースを見ても、感じ方は人それぞれであり、同じ出来事を経験しても受け取り方は異なります。つまり、誰もが自分だけのユニークな物語を生きているのです。
「みんなと同じ」であることを目指して、自分の物語を薄める必要はありません。あなたが大切にしたいゴール、心から挑戦したいと感じること、少し変わっているかもしれないけれど心躍る選択。それら一つひとつが、あなたの人生を豊かに彩ります。
まずは、バイオパワーという見えない力の存在を知ってください。そして、「自分はどのように生きたいのか」「どんな未来を選びたいのか」という問いを、自分の心にそっと問いかけてみてください。
どんな意見を言われても、どんな常識が語られていても、あなたの人生の主役は、常にあなた自身です。
