ゴール達成の鍵は「自己評価」
ゴールを達成したい、理想の未来に近づきたいと考えるとき、多くの人は「方法」や「ノウハウ」に注目しがちです。どの勉強法が効率的か、どのツールが便利か、どんな計画を立てるべきかを調べることは、確かに重要なステップです。
しかし、それ以上に結果に影響を与えるのが「自己評価」です。ここでの自己評価とは、「自分にはそのゴールを達成する力がある」とどれだけ真剣に信じられるかという感覚です。
同じ能力や環境にあっても、「自分にはできる」と信じる人と、「どうせ無理だ」と思う人では、行動の量や質、継続力が大きく異なります。自己評価は、まさにゴール達成の原動力と言えるでしょう。
自己評価を形づくる2つの要素―エフィカシーとセルフエスティーム
自己評価には大きく分けて二つの側面があります。一つは「エフィカシー」、もう一つは「セルフエスティーム」です。
エフィカシーとは、ゴール達成に関する自分の能力についての自己評価です。例えば、「時間はかかるかもしれないが、最終的には英語で仕事ができるようになる」「経験は少ないけれど、学び続ければこの分野でも通用するようになる」といった感覚がエフィカシーです。具体的なスキルの有無よりも、「やればできるはずだ」という自分の可能性への信頼に近いものです。
一方、セルフエスティームは、自分という存在そのものに対する自己評価です。「肩書きや成果に関係なく、自分には存在価値がある」「うまくいっているときも、つまずいているときも、自分は大切な存在だ」と感じられるかどうか。「自分のゴールの素晴らしさを自ら誇る」その「自分を認める感覚」がセルフエスティームです。
今、特に意識したいのは「エフィカシー」
セルフエスティームももちろん重要ですが、ゴール達成という観点から見ると、まず意識したいのはエフィカシーです。なぜなら、エフィカシーは「行動する力」を直接高めてくれるからです。
エフィカシーは、生まれつき決まるものでも、固定された性格でもありません。日々の考え方や言葉の使い方、人との関わり方によって、後からでもいくらでも高めることができます。その入り口として、特に大きな影響を持っているのが「セルフトーク」です。
エフィカシーを向上させる第一歩―セルフトークへの気づきから始める
セルフトークとは、心の中で自分自身に語りかける「内なる声」のようなものです。声に出さなくても、頭の中では常に何かをつぶやいています。例えば、物事がうまくいかなかったときに、「また失敗した」「自分はダメだ」「向いていないのかも」といった言葉が、無意識に流れていないでしょうか。
仕事でミスをして上司に注意されたとき、「やっぱり自分は能力がない」と心の中でつぶやいてしまうことがあります。家事や子育てが思うようにいかない日には、「自分は周りの人より劣っている」と感じてしまうかもしれません。これらは、どれもネガティブなセルフトークです。そして、その一つひとつが、少しずつエフィカシーを削っていきます。
重要なのは、ネガティブなセルフトークを「出さないようにすること」ではありません。人間ですから、落ち込むこともあれば、つい自分に厳しい言葉を投げかけてしまうこともあります。それ自体は自然な反応です。
ポイントは、ネガティブなセルフトークに気づいた瞬間に、意識して言葉を切り替えることです。「あ、今『自分はダメだ』と言ってしまったな」と気づけたら、「これは本来の自分らしくない」と一度認識し直し、「次はこうしてみよう」「今回の経験から学べることは何だろう」と、未来につなげる言葉に変えていきます。
例えば、プレゼンでうまく話せなかったときに、「やっぱり自分には人前で話す才能がない」と決めつけてしまう代わりに、「今回は準備時間が足りなかった。次は練習の時間をもう少し増やしてみよう」と考え直してみるイメージです。状況は同じでも、セルフトークが変わることで、「次に向けての一歩」が見えてきます。
ポジティブなセルフトークを「自分らしい状態」にする
うまくいったときのセルフトークも、とても大切です。小さな成功や前進を感じたときに、「たまたまだ」「運が良かっただけだ」と片付けてしまう人も少なくありません。しかし、この受け取り方は、せっかくのエフィカシーの芽を、自分で摘んでしまうようなものです。
そこで、うまくいったときには、「これが自分らしい」と意識してみてください。例えば、「今日のミーティングでは落ち着いて意見が言えたな」と感じたときに、「本来の自分は、落ち着いて状況を整理できる人間だ」と認めてみる。「新しいことに挑戦する自分が、自分らしい姿なんだ」と、心の中で何度も言葉にしてみる。こうしてポジティブな状態を「自分の標準」として受け入れていくことで、エフィカシーは少しずつ、しかし確実に高まっていきます。
言葉の世界で生きる私たち
私たちは日々、言葉を駆使して生活しています。会話だけでなく、内なる思考もほとんどが言葉で構成されています。つまり、自分をどのような言葉で表現するかが、自分の世界の質を左右すると言えるでしょう。
同じ出来事でも、「やっぱりダメだ」と結論づけるのか、「ここから何を学べるだろう」と問いかけるのかで、感じ方やその後の行動が変わります。注意を受けたときに、「自分は否定された」と捉えるのか、「成長の機会を得た」と捉えるのか。その違いが、数ヶ月後、数年後の自分を大きく変えていきます。
だからこそ、セルフトークを整えることは、自分の内なる「言葉の環境」を整えることでもあります。内なる言葉が変わることで、自己効力感が高まり、ゴールに向かうエネルギーが強まります。
他者のエフィカシーを高める視点
エフィカシーを育むには、自分自身だけでなく、他者のエフィカシーにも目を向けることが大切です。
例えば、職場で後輩がミスをして落ち込んでいる場面を想像してみてください。そのとき、「どうしてこんなこともできないんだ」と責めることもできますが、「ここまでよく頑張ったね。今回の経験は次に活かせるよ」と伝えることもできます。後者の言葉は、相手のエフィカシーを少しずつ高める効果があります。
家族との会話でも同様です。子どもがテストで思うような点数を取れなかったとき、「ちゃんと勉強しなさい」と叱るだけで終わらせるのではなく、「悔しい気持ちを大切にしながら、次はどうしたい?」と問いかけてみる。こうした関わり方は、相手のエフィカシーに光を当てることにつながります。
不思議なことに、「相手のエフィカシーを高めよう」と関わることで、自分自身のエフィカシーも高まります。なぜなら、その瞬間の自分は「相手の可能性を信じている自分」だからです。相手の中の可能性を信じる視点を持つことで、「自分の中の可能性」にも自然と光が当たります。
エフィカシーの高い人々と同じ空間を共有することは、非常に効果的です。ゴールに向かって積極的に取り組む人々や、失敗を乗り越えて工夫を重ねる人々、そして自分や他者の可能性を信じる人々と一緒にいると、そのポジティブなエネルギーが自然と自分にも伝わってきます。
例えば、オンラインの勉強会やコーチングのグループセッション、共通のテーマに興味を持つコミュニティは、エフィカシーの高い人々とつながる場として最適です。参加することで、「こんなゴールを持ってもいいんだ」「年齢や環境に関係なく挑戦している人がいる」と実感する機会が増えていきます。
オンラインの発展により、住んでいる場所に関係なく、全国や世界中の人々とつながることが可能です。画面越しでも、エフィカシーの高い人々の言葉や表情、雰囲気に触れることは大きな刺激となります。「自分にもできるかもしれない」「このゴールを目指してもいいのだ」という感覚が、少しずつ自分の中に根付いていくでしょう。
言葉と場を整えながら、自己評価を育てていく
ゴール達成の出発点は特別な才能や完璧な計画ではなく、自分の可能性をどう評価するかという内面的な感覚から始まります。
自己評価を育てるために、まずは自分のセルフトークに気づくことが大切です。ネガティブな言葉が出たときには、「これは本来の自分らしくない」と認識し、「次はこうしよう」「ここから何を学べるだろう」と未来志向の言葉に変えてみましょう。成功したときには、「これが自分らしい状態だ」と自分を認める言葉を添えてみてください。
また、自分だけでなく周囲の人々のエフィカシーを高める関わり方を意識することも重要です。ミスをした相手を責めるのではなく、「ここからどうしようか」と一緒に考える姿勢を持つことで、相手の可能性だけでなく自分の可能性にも光が当たります。さらに、エフィカシーの高い人々と場を共有し、その空気感に触れる時間を増やすことも大きな助けとなるでしょう。
こうした小さな選択の積み重ねが、あなたの自己評価を静かに、しかし確実に育てていきます。そして、その自己評価こそが、あなたをゴールへと導く力強いエンジンとなるのです。
