毎朝、同じ自分を選んでいませんか──過去に縛られる脳のクセ

「毎日それなりに頑張っているのに、半年前と何も変わっていない気がする」
「年始に立てた目標が、いつの間にか消えている」
「このままじゃいけないと思いながら、結局いつも同じ日常に戻ってしまう」

もしあなたがそう感じているなら、それは努力が足りないからではありません。
実は、あなたの脳が「過去」を基準に今日を自動運転しているだけかもしれないのです。

今日は、なぜ私たちは過去に縛られるのか、その脳の仕組みと、そこから抜け出す方法についてお伝えします。

目次

なぜ毎日が「同じことの繰り返し」に感じるのか

朝起きて、いつもの時間に支度をして、いつもの道を通って、いつもの仕事に向かう。
帰宅して、いつもの時間に食事をして、いつもの時間に眠りにつく。

生活にはリズムがあり、それ自体は悪いことではありません。

しかし、問題は行動のパターンだけではなく、思考のパターンも同じことを繰り返しているということです。

同じ場面で同じことを考え、同じ感情を感じ、同じ反応をする。
その結果、同じ行動をとり、同じ結果を得る。

「変わりたい」と思っているのに変われないのは、意志が弱いからではありません。
脳が昨日と同じ自分を、今日も自動的に再生しているからなのです。

脳は「省エネ」で動いている──過去のプログラムを再生する仕組み

なぜ脳は、同じパターンを繰り返すのでしょうか。

その理由は、脳が徹底的に「省エネ」を好むからです。

脳は体重のわずか2%程度の重さしかありませんが、全身のエネルギーの約20%を消費する、非常にコストの高い臓器です。

そのため脳は、できるだけエネルギーを節約しようとします。
そして最も効率的な節約方法が、過去にうまくいったパターンをそのまま再利用することです。

新しいことを考え、新しい判断を下すには、大きなエネルギーが必要です。
しかし、過去に経験したパターンをそのまま再生するなら、ほとんどエネルギーを使わずに済みます。

朝のルーティンを無意識にこなせるのも、車の運転を考えなくてもできるのも、この仕組みのおかげです。

しかし、この省エネモードは思考や感情にも適用されます

昨日と同じことを考え、昨日と同じことを感じ、昨日と同じ反応をする。
脳にとってはそれが最も「楽」だから、自動的にそのパターンを選んでしまうのです。

情動記憶とRASが、過去の世界を維持し続ける

この「過去の再生」をさらに強固にしているのが、前回までにお伝えした情動記憶RASの仕組みです。

情動記憶は、過去の感情体験をもとに「何が安全で、何が危険か」「何が快で、何が不快か」を脳に記録しています。
脳はこの記録に従って、自動的に行動を選びます。

そしてRASは、情動記憶がつくった自己イメージに基づいて、「何を意識に上げ、何をスコトーマに隠すか」を決めています。

つまり、情動記憶が過去の基準を維持し、RASがその基準に合った情報だけを見せ続ける

この二つが連動することで、脳は「過去と同じ世界」を毎日再構築しているのです。

新しい可能性はそこにあるのに、RASがスコトーマに隠している。
新しい行動を取ろうとしても、情動記憶が「やめておけ」とブレーキをかける。

「変わりたいのに変われない」の正体は、脳のこの自動システムにあります。

「現状維持」は生存本能──だから意志の力だけでは抜け出せない

ここで重要なのは、脳が過去を繰り返すのには、ちゃんとした理由があるということです。

それは、生存本能です。

脳にとって最も大切なのは、「生き延びること」です。
そして、昨日まで生き延びてこられたという事実は、昨日までのパターンが「安全だった」という証拠です。

だから脳は、実績のあるパターンを手放したがりません。
新しいことは「未知」であり、未知はリスクを意味するからです。

これが、「現状維持バイアス」と呼ばれる脳の強力な傾向です。

「今のままでいい」と感じるのは、本当に満足しているからとは限りません。
脳が「変わること」のリスクを避けようとしているだけかもしれないのです。

だからこそ、意志の力だけで変わろうとしても難しい。
「頑張って変わる」のではなく、脳の仕組みに沿ったやり方で変えることが必要なのです。

過去のループを断ち切るのは、want toのゴールだけ

では、どうすれば脳の「過去の再生」を止められるのでしょうか。

答えは、want to──心から望むゴールを設定することです。

脳が過去を再生するのは、「現状の方が安全だ」と判断しているからです。
しかし、心から望むゴールが設定されると、脳にとっての「重要なもの」が変わります。

RASのフィルターが切り替わり、過去の基準ではなくゴールに関連する情報が意識に上がり始める。
情動記憶のブレーキよりも、ゴールに向かうワクワクが上回り始める。

ここで大切なのは、そのゴールがhave to(やらなければならない)ではなく、want to(心からやりたい)であることです。

have toのゴールでは、脳はそれを「義務」「負荷」と判断します。
すると省エネモードが働き、やはり過去のパターンに引き戻されてしまいます。

しかしwant toのゴールは、脳にとって「報酬」です。
報酬に向かうとき、脳は新しいパターンを受け入れるためにエネルギーを使うことをいとわなくなります。

過去のループを断ち切る力は、努力や根性ではなく、「心から望む未来」の中にあるのです。

未来から今日を見る──時間軸を反転させる

脳が過去を繰り返すのは、過去を基準に今日を判断しているからです。

「昨日までの自分」をもとに、「今日の自分」を決めている。
だから、昨日と同じ今日が生まれる。

この流れを変えるには、時間軸を反転させることです。

過去から今日を見るのではなく、未来から今日を見る

「ゴールを達成した自分なら、今日どう過ごすだろうか」
「want toのゴールに向かっている自分なら、この場面でどう判断するだろうか」

この問いかけを持つだけで、今日の選択の基準が「過去」から「未来」に切り替わります。

すると、いつもと同じ場面でも、違う思考が生まれ、違う感情が湧き、違う行動が自然と選ばれるようになります。

毎朝、同じ自分を再生する必要はありません。
毎朝、未来の自分から今日を選び直すことができるのです。


冒頭でお伝えした、「半年前と何も変わっていない」「いつも同じ日常に戻ってしまう」という感覚。
その原因は、脳が過去のパターンを自動再生していたことにありました。

しかし、それは脳の仕組みがそうさせていただけであって、あなたの限界ではありません。

want toのゴールを持ち、未来の自分から今日を見る。
その瞬間から、脳は新しいパターンを受け入れ始め、「同じことの繰り返し」は静かに終わりを迎えます。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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