脳の「重要」が変われば人生が動く

私たちの脳は、膨大な情報の中から「自分にとって重要だ」と判断したものだけを選び出し、それを基に世界を構築しています。
つまり、今あなたが見ている世界は、脳が重要とラベル付けした情報で成り立っているのです。
このラベルは、通常、昨日までの基準をそのまま引き継ぎます。
昨日の自分が重要と考えたものは、今日も明日も目に入りやすく、逆に基準の外にあるものは、たとえ目の前にあっても見えにくいままです。
この仕組みは効率的ですが、変化を望むときには大きな障害となります。

脳は毎秒膨大な情報を受け取りますが、そのすべてを意識に上げることはできません。
そこで無意識に選別が行われます。
たとえば、騒がしい場所でも自分の名前が聞こえるのは、「自分に関係がある」と判断された音だけを拾い上げるからです。
新しい赤い車を買った日に、街中の赤い車が目に留まるのも同様で、脳が「赤」を重要とみなしているため、関連情報が際立つのです。
ここで重要なのは、何を重要とするかの基準は過去の自分が決めており、基準を更新しない限り、見える世界は昨日の延長にとどまるということです。

コンフォートゾーンという言葉は聞き慣れないかもしれませんが、これは「今の自分が自然体でいられる状態の枠」を指します。
慣れた人間関係や日々の忙しさ、使う言葉、時間の使い方、机の配置などがこの枠に含まれます。
枠の外には未知があり、少し怖さもある一方で、本当に行きたい場所もそこにあります。
枠の中にいる限り、脳は昨日の重要を今日も守り続けます。
ですから、枠の外にゴールを設定すると、重要ラベルが貼り替えられ、見える情報が変わっていきます。

ゴールが設定されると、脳はそれに関連する手がかりを拾いやすくするように働き方を変えます。
今まで見過ごしていたポスターやSNSの投稿、会話の断片、店頭の小さなチラシが、突然意味を持ち始めます。
英語を話せる自分を想像した瞬間に、通勤路の小さな語学カフェが目に入り、海外出身の同僚に声をかけるタイミングに気づくようになります。
朝のランニングを習慣にすると決めた人は、前夜のカフェイン摂取や就寝時間に自然と注意が向き、日常の優先順位が変わります。
ゴールがないと、脳は過去の自動運転を続けます。
だからこそ、完璧でなくても仮のゴールを設定する価値があります。

最初から完璧なゴールである必要はありません。
ゴールは現在形で表現するのが効果的です。
「できるようになりたい」よりも「できている」と書くことで、脳は基準を前倒しに扱います。
行動に直結する一手を、時間と場所に結びつけると、日常の流れに組み込みやすくなります。
誰かの評価よりも、自分の感覚に基づいて判断すると、疲れが軽減され、再開のハードルも下がります。
そして、ゴールは上書きしても構いません。
近づいたと感じたら、ためらわずに少し先へ動かしてください。
これにより惰性を防ぎ、新しい情報がまた見えてきます。

ゴールが見つからないときは、まず行動を起こし、その後でゴールを修正するというアプローチを試してみてください。
動き出すことで、次第にゴールの輪郭が明確になることがあります。
続けられないと感じるときは、自分の意志が弱いのではなく、まだ古いコンフォートゾーンに留まっているだけだと理解すると気が楽になります。
周囲の目が気になるときは、他人の評価よりも自分の身体感覚に基づいて判断してみてください。
身体感覚が合っているときは、再開するのが簡単で、やめた後も戻りやすいです。

脳は重要だと認識したものにしか注意を向けません。
多くの場合、その認識は過去の自分が決めています。
枠の外にゴールを設定すると、重要性のラベルが変わり、見える情報も変わります。
完璧である必要はありません。
現在の状況に仮のゴールを設定し、日常の中で行動に結びつけ、近づいたらゴールを更新していきましょう。
今日の5分を使って、最初の一歩を踏み出してみてください。
世界の見え方は、静かに、しかし確実に変わり始めます。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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