RASで成果が変わる:ゴール先行の習慣

私たちは日々、膨大な情報に接していますが、すべてを処理することはできません。
そのため、脳は重要と判断した情報を優先し、そうでないものを背景に退けます。
結果として、私たちの世界観は「自分が重要と信じる情報」によって形成されます。

この情報の選別を担うのが、脳幹の基底部にあるフィルター機能、RAS(網様体賦活系)です。
フィルターを通らなかった情報は、心理的な盲点であるスコトーマとして見えにくくなります。
この仕組みを理解し、意図的に活用することで、注意の向け方を少し変えるだけで日々の選択や成果が大きく変わります。

RASは、現在の自分に関連性が高いと判断した情報を通し、関連性が低いものは通さない門番のような役割を果たします。
静かなカフェで友人の声が自然と耳に入ったり、最近気になり始めたスマホの広告が目に留まったりするのは、RASが働いている証拠です。
これは視覚だけでなく、聴覚や触覚、嗅覚、味覚といった五感全体で起こります。
そのため、「そこにあるのに気づかない」ことが普通に起こります。

スコトーマは本来、眼科で使われる「盲点」を指しますが、ここでは心理的に見えなくなっている領域を意味します。
たとえば、会議のメモに重要なヒントが書かれているのに見逃したり、机の上にあった鍵が見つからず、誰かに指摘されて初めて気づくことがあります。
子どもの変化に周囲は気づいているのに、親だけが見過ごすこともあります。
これらは能力不足ではなく、RASが「今の自分には重要でない」と判断した情報を背景に押しやった結果です。

RASは、何を重要とみなすかの基準を必要とします。
その基準がゴールです。
達成したい未来像が明確であるほど、それに関連する手がかりが優先的に目に入るようになります。
逆に、ゴールがないと、何を通すべきかの判断がつかず、重要な情報を見逃しやすくなります。
先にゴールを設定することで、必要な情報が自然に集まり、行動の選び方まで変わっていく――これが「ゴールが先、認識は後」という原理の実体です。

転職活動を始めると、関連ニュースや求人、勉強会の情報が急に増えたように感じることがあります。
実際には前から存在していた情報で、RASが通すようになっただけです。
健康づくりに取り組むと、エレベーターより階段を選ぶ自分に気づき、夜更かしを控える選択が自然に増えていきます。
英語で会議を回すと決めた瞬間、通勤の英語アナウンスや記事の言い回し、海外動画の表現が、ただの雑音や娯楽ではなく“教材”に変わって感じられます。
世界そのものが変わったのではなく、注意の当て方が切り替わったのです。

ゴールは大げさでなくて構いません。
達成したときの具体的な情景を思い描き、今日変える行動を一つ決め、夜にはその進捗を一行で記録する。
この三つのポイントを押さえましょう。
つまり、情景を明確にイメージし、行動を小さく設定し、検証を簡単に行う流れです。
これがRASに明確な信号を送り、スコトーマを取り除く感覚が安定します。

RASは、あなたの注意を導く強力な味方です。
スコトーマは敵ではなく、限られた認知資源を守るための仕組みです。
だからこそ、まずゴールを設定し、そこから逆算して日々の選択を整えることが効果的です。
今日できる小さな一歩から始めて、世界の見え方を変えていきましょう。
あなたのゴールに向けて、注意という資産の使い方を育てる時間が、確実な前進に繋がります。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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