なぜコーチングなのか原点を振り返る

コーチングに興味を持つきっかけは、さまざまな出来事から生まれるものです。
ある人にとっては、一冊の本との出会いがその始まりかもしれませんし、尊敬する人がコーチングを学んでいると知った瞬間かもしれません。
また、「このままでいいのだろうか」と心の奥で何かが引っかかった日を思い出す方もいるでしょう。

少し立ち止まって、その時の気持ちを静かに振り返ってみてください。
言葉にはならなくても、そこには確かに「想い」があったはずです。

コーチングに興味を持つ背景には、一人ひとり異なる物語があります。
例えば、仕事に真剣に取り組んでいるのに、「もっとできるはずなのに」ともどかしさを感じていた時期があったかもしれません。
周囲からは「しっかりしているね」「頼りになるね」と言われながらも、自分の本音や本当にやりたいことが見えなくなっていたこともあるでしょう。

家族や職場の人間関係で、「分かってほしい」と「分かってあげたい」という気持ちがすれ違い、どう向き合えばいいのか悩んでいた経験がある方もいるでしょう。
日常に大きな不満はないのに、「このまま歳を重ねていくのかな…」と漠然とした空虚さを感じたことがあるかもしれません。

こうした「どこか引っかかる感じ」や「もっとこうなりたい」という願いが、コーチングとの出会いにつながったのではないでしょうか。

眠っている能力を開花させたいという願望。
理想の自分に変わりたいという切実な思い。
時間的・精神的な余裕を手に入れて、もっと自分らしく生きたいという憧れ。
本当に望むゴールを見つけたいという探究心。
「やらなければならない毎日」ではなく、「やりたいことに満ちた毎日」にシフトしたいという欲求。
人間関係をもっと穏やかで安心できるものにしたいという祈りのような気持ち。
自分の人生を楽しみながら、多くの人の役に立ちたいという思い。

これらのどれか、あるいはいくつかに、あなたの心が小さく反応したのではないでしょうか。

中には、「なんだかこの人面白そうだな」と惹かれた相手がたまたまコーチだったというきっかけの方もいます。
その人の話し方や在り方に触れ、「自分もこんなふうに人と関わることができたら」と感じたことが、最初の一歩になっているケースも少なくありません。

理由は大きくても小さくても構いません。
立派である必要も、特別である必要もありません。
しかし、その時「何か」を感じ取った自分が確かにいたという事実はとても大切です。

もし少し時間が取れそうであれば、紙やノート、あるいはスマホのメモアプリなどに、自分への問いを書き出してみてください。

「私が最初にコーチングに興味を持ったのは、どんな場面だっただろう」
「その時、心の中でどんな言葉をつぶやいていたかな」
「その瞬間の自分は、何に困っていて、何を望んでいたのだろう」

たとえば、「このままの働き方を続けると、家族との時間が減ってしまうのではないか」という不安を抱えていたかもしれません。
「もっと自分らしい働き方をしたいが、どう変えればいいのか分からない」というもどかしさを感じていたかもしれません。
または、「子どもやパートナーと穏やかに話したいのに、つい感情的になってしまう自分を変えたい」という切実な願いがあったかもしれません。

こうして言葉にしてみると、「ああ、自分はこんなことを大切にしたくて、コーチングに惹かれたんだな」と、当時の気持ちが少しクリアになります。
それは単なる「興味」や「流行への反応」ではなく、あなたの価値観や生き方に対する深い願いそのものです。

コーチングを学び始めると、理論やスキル、ツールなど、たくさんの情報に触れるようになります。
本を読み、講座を受け、ワークを実践するうちに、「もっと学んでみたい」と感じることもあるでしょう。
あるいは、「自分なんてまだまだだ」と、自分で自分にブレーキをかけてしまう瞬間も出てくるかもしれません。

そんなときこそ、一度立ち止まって、原点に戻ることが役に立ちます。

「そもそも、私はなぜコーチングに惹かれたのだろう」
「どんな自分を変えたくて、どんな未来をつくりたくて、この世界の扉を開いたのだろう」

最初の想いを思い出すことは、自分の中心に戻ることです。
原点に触れると、不思議と心の奥にあたたかさが戻ってきます。
「完璧じゃなくていい。少しずつでいいから、また一歩進んでみよう」と自然に思えるようになります。

最初に感じた小さな違和感や、「もっとこうなりたい」というささやかな願いこそが、これから先もあなたを前に進めてくれるエネルギーです。
どれだけ知識を身につけても、どれだけスキルを増やしても、この「想い」が弱くなってしまうと、学びはどこか他人事のようになってしまいます。
逆に、想いがしっかりと自分の中に根づいていれば、多少時間がかかっても、必ず自分なりのペースで前に進んでいくことができます。

ここで一つだけ、意識しておきたいことがあります。

それは、自分の想いを、誰かの理由と比べてジャッジしない、ということです。

「動機が不純なんじゃないか」と自分を責める必要はありません。
「自分なんかが人をサポートしたいと言っていいのだろうか」と遠慮する必要もありません。
「有名なコーチのような立派な理由がないから、自分はダメだ」と考える必要もありません。

家族との時間を守りたいから、でもいいのです。
会社だけに依存しない、自分らしい居場所をつくりたいから、でも構いません。
もっと自分のことを好きになりたい、自分を信じられるようになりたい、という理由だって立派な原動力です。

どんな想いも、あなたにとっては、大切なサインです。
そのサインを否定せず、「よくここまで感じてくれたね」と、そっと抱きしめてあげてください。

静かな場所で、自分自身に問いかけてみましょう。

「なぜ私はコーチングに興味を持ったのか」
「あの時、扉を開けた自分に、今の私はどんな言葉をかけたいのか」

忙しい日々の中で、時折原点に立ち返ることで、「今、何のために学んでいるのか」「これからどこに向かうのか」が再び明確になります。

自分の想いを再確認し、大切にすること。
それが、これからの学びや実践を支える力となります。

コーチングの世界に足を踏み入れたときの小さな決断。
その決断をした自分を、ぜひ誇りに思ってください。

あなたの中のその想いが、これからの人生を静かに、しかし確実に支えていきます。
そして、その想いが、コーチングを通じて誰かの人生にも光を灯す力となるのです。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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