スコトーマを外し学びを深める思考法

私たちは、目の前の情報をすべてそのまま受け取っているわけではなく、自分が「重要だ」と感じたものだけを選んで見ています。
それ以外の情報は、存在していても意識にはほとんど上がってきません。

このように、無意識のうちに見えていない領域が生まれます。
コーチングの分野では、この見えていない領域を「スコトーマ(心理的な盲点)」と呼びます。

例えば、「次の車は白のミニバンにしよう」と考え始めると、それまで気にならなかった白いミニバンが急に目につくようになります。
もちろん、白いミニバンは以前から走っていましたが、「自分にとって大事な情報」になった瞬間、世界の見え方が変わるのです。
これが、スコトーマが一部外れた状態です。

同様のことは、仕事や人間関係でも起こります。
転職を考え始めると求人広告が急に目に入ったり、子育てに意識を向けると親子連れの様子が気になったりします。
世界が変わったのではなく、あなたの「焦点」が変わった結果、見える世界が変わっているのです。

では、スコトーマを少しずつ外すにはどうすればよいのでしょうか。
第一歩は、意識的に情報量を増やし、現状をできるだけありのままに認識しようとする姿勢を持つことです。

「よく分からない」「なんだかモヤモヤする」と感じるとき、その原因は必ずしも能力不足ではありません。
単に、情報の絶対量が足りていないだけの場合が多いのです。

例えば、ある分野について本を一冊だけ読んで「自分には向いていない」と決めてしまうことがありますが、それはその分野に関する情報がまだほんの一部しか入っていない状態かもしれません。
また、職場の一人の上司の価値観だけを聞いて「社会とはこういうものだ」と早合点してしまうことも、情報源が偏っている例です。

こうした場合、「分からなさ」や「行き詰まり感」は、知識や能力というよりも、情報の少なさが生み出している可能性が高いのです。
だからこそ、意識して本や記事を読む機会を増やしたり、セミナーや講座に参加したり、普段接点のない人の話を聞いたりして、情報の母数を増やすことが大切です。

新しいことを学ぶとき、私たちの脳は「これは今までのどの経験と似ているだろうか」と過去の記憶と照合しています。
講演会で初めて聞く理論に出会ったときも、読書で新しい概念を知ったときも、誰かの話を聞いて「勉強になるな」と感じたときも、その裏側では、これまでの記憶との比較作業が行われています。

これは人間の自然な働きであり、決して悪いことではありません。
むしろ、まったく何のつながりも見いだせなければ、私たちは不安になります。
過去の経験との共通点を見つけることで、「なるほど、これはあのときの話と似ているな」と安心しながら理解を深めていくことができます。

学びの過程で、時折「同じだ」「知っている」といったセルフトークが現れ、学びを止めてしまうことがあります。
これらの言葉を聞くと、脳は「既に理解している」と判断し、深く考えることをやめてしまうのです。
その結果、注意が散漫になり、以降の情報が頭に入らなくなります。

例えば、会社の研修で以前と同じテーマが再び取り上げられたとき、「またこの話か」と思った瞬間、集中力が途切れ、メモを取る手が止まり、心が他のことに向いてしまった経験はないでしょうか。
また、セミナーで既に読んだ本の内容が紹介されたとき、「知っているから大丈夫」と流してしまい、新たな気づきを逃すこともあります。

しかし、実際には全く同じ話というのはほとんどありません。
話し手が変われば、具体例や話の順序、強調点も変わります。
聞き手であるあなた自身も、前回とは異なる経験を積んでいるため、同じキーワードでも異なる響きを持つことがあります。

それにもかかわらず、「同じだ」というセルフトークで学びの扉を閉じてしまうことがあります。
実際には、より深い理解や新しい視点を得るチャンスを見過ごしているのです。

だからこそ、学びの場で「同じだ」「知っている」と感じたときは、心の中で警告サインとして受け取ってください。
私自身も常に意識している重要なポイントです。

「知っている」と感じた瞬間には、立ち止まって自問してみましょう。
「本当に全く同じなのか」「今の自分だからこそ気づけることはないか」「この話を自分のゴールにどう結びつけられるか」。
こうした問いを投げかけることで、脳は再び学びのモードに戻ります。

同じように聞こえる話の中にも、「より高いレベルでの理解」や「以前は見過ごしていた部分の再発見」が含まれています。
例えば、以前は漠然と理解していた概念が、今の経験と結びつくことで、「こういうことだったのか」と深い理解に至ることがあります。
この瞬間こそ、学びが一段階上がるときです。

これまでの話をゴールという視点で考えてみましょう。
心から望むゴールを持つと、学びの深さが自然に増します。

例えば、「海外のクライアントと協力して、世界平和に貢献するプロジェクトを進めたい」と願う人を想像してください。
この願いが本物であれば、英語の習得や国際情勢の理解、異文化の学びは、単なる勉強ではなく、ゴールに向かう具体的なステップとなります。

また、「家族との時間を大切にしつつ、好きな仕事で経済的に自立したい」と考える人にとっては、時間管理の本やビジネススキルの講座、コーチングや心理学の学びが、未来を築くための材料となります。
ゴールに強く結びついているほど、「これは自分の未来にどう役立つか」という視点が自然に生まれます。

このような状態では、「同じだ」と感じる場面でも、「以前聞いた話だが、今回はゴールのこの部分と組み合わせて考えてみよう」といった工夫が生まれます。
学びが単なる知識のインプットではなく、ゴール達成のための具体的な道具集めに変わります。

スコトーマは誰にでも存在します。
特別な人だけのものではありません。
重要なのは、スコトーマを完全に消すことではなく、「自分には今、見えていない部分があるかもしれない」と柔軟に認めることです。

そのための実践として、意識的に情報を増やし、「同じだ」というセルフトークに気づいたらイエローカードと捉え、心から望むゴールを思い出しながら、「この学びを自分の未来にどう活かせるか」と問い続けてください。

学びは本来、とても楽しいプロセスです。
正解を一つだけ探すのではなく、ゴールに近づくためのヒントを集める旅のように捉えると、日常の小さな気づきや出会いもすべてが宝物のように感じられます。

今日もまた、あなたのゴールに向かって、楽しみながらスコトーマを一つひとつ外していきましょう。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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