過去に縛られない未来基準の生き方

私たちは通常、時間は「過去から現在、そして未来へ」と流れると考えます。
小学校の時間軸の授業や歴史の教科書でも、時間は「過去 → 現在 → 未来」と左から右へ描かれています。

しかし、コーチングの世界では異なる視点を持ちます。
時間を「未来 → 現在 → 過去」と捉える考え方です。

最初はこの考え方が少し奇妙に思えるかもしれませんが、この視点を持つことで、「過去に縛られて生きる」から「望む未来を基準に今を生きる」へと徐々にシフトすることができます。

まず知っておくべき事実があります。
それは、過去は常に私たちから遠ざかっているということです。

昨日の出来事、数年前の失敗、子どもの頃の思い出は、今この瞬間も少しずつ遠ざかっています。
もう二度と、まったく同じ形で再現されることはありません。

それにもかかわらず、私たちはしばしば、遠ざかる過去に執着してしまいます。
「あの時こうしていれば」「どうしてあんなことを言ったのだろう」と何度も思い返し、「あの失敗があったから自分はダメだ」と、今の自分の価値を決めつけてしまうことがあります。

過去ばかり見つめていると、意識の大部分が「もう変えられない時間」に向かってしまい、本来は自由に選べるはずの「これからの未来」が狭く見えてしまいます。

実際には、遠ざかる過去にしがみつく必要はありません。
過去は「参考資料」として棚にしまっておく程度で十分です。
これからの人生を決めるのは、今この瞬間から選び直すことのできる「未来」だからです。

もし何かにこだわるのなら、過去の出来事ではなく、これからどんな未来を選ぶのかという「未来の選択」にこだわることをおすすめします。

なぜなら、あなたが意識を向け、選び続ける未来の姿が、これからの現在を少しずつ形作っていくからです。

たとえば、過去に人前でのプレゼンで大きく失敗した経験があったとします。
その出来事だけを基準にすると、「自分は人前で話すのは向いていない」「きっと次も失敗するだろう」と考えてしまいやすくなります。
すると、緊張しそうな場面を無意識のうちに避けるようになり、結果として「人前で話す機会が減っていく未来」を自分で選んでしまうことになります。

一方で、「次は落ち着いて話せている自分」「聞き手の表情を見ながら、楽しそうに話している自分」という未来の姿をあえて選んだとしたらどうでしょうか。
そのイメージに近づくために、少人数で練習してみたり、録音して話す練習をしてみたりと、自然に行動が変わっていきます。
選んだ未来にふさわしい現在を、自分で作り始めるわけです。

自分で未来を選ばなければ、私たちはつい、過去に見た映像の続きに向かってしまいます。
だからこそ、「これからどんな未来を選ぶのか」にこだわることが、とても大切になってきます。

時間の流れを「未来 → 現在 → 過去」として捉えることは、単なる知識としてではなく、感覚として理解することが重要です。
ここでは、その流れを体感するための簡単な方法を紹介します。

まずは、私たちが慣れ親しんでいる「現在から過去」への流れをイメージすることから始めましょう。
例えば、今日一日の出来事を思い返してみてください。
朝起きてからこの文章を読むまでの間に起こったことが、順を追って流れ、夜には「今日の思い出」として心に刻まれます。
つい先ほどまで「今」だったことが、少し時間が経つと「過去」になっていることを実感できるでしょう。

この「現在が過去へと流れていく感覚」をしっかりと感じたら、次に「未来から現在への流れ」を想像してみましょう。

例えば、一ヶ月後の自分を思い描いてみてください。
行きたかった場所への旅行や、新しい仕事に挑戦している自分を想像してみましょう。
どんな服を着て、どんな景色を見て、誰と一緒にいて、どんな会話をしているのかを、映画のワンシーンのように細かく思い浮かべてください。

今はまだ「未来の出来事」ですが、一ヶ月後にはそれが「今の体験」として現れ、さらに時間が経てば「過去の思い出」として振り返ることになります。
未来の映像が時間とともに現在に現れ、やがて過去の記憶となる。
この流れを繰り返しイメージすることで、「未来 → 現在 → 過去」という時間の流れが感覚として馴染んでいきます。

ここで大切なのは、今この瞬間からどんな未来を選び直すこともできるということです。
仕事や家庭、年齢や健康といった変えにくい条件があるかもしれませんが、「どんな方向に進みたいか」「どんな自分でありたいか」という選択は、心の中で何度でもやり直せます。

数年後の自分を想像してみてください。
どんな働き方をして、どんな人たちと笑い合い、どんな気持ちで一日を終えたいですか?
こうした問いに答えていくうちに、自分が本当に望む未来の姿が見えてくるでしょう。
他人の期待や過去の延長ではなく、自分の内から湧き上がる「こうなったら嬉しい」という感覚が、次第に明確になっていくはずです。

心から望む未来を選ぶために、「無理かどうか」「現実的かどうか」というフィルターを一度外してみましょう。
その小さな決意が、時間の流れに乗って、やがて現実の変化として現れてくるのです。

未来を選ぶ際に重要なのは、「現状の延長線上にない未来」を意識的に選ぶことです。

多くの人は、現在の仕事や収入、スキル、人間関係を基に「これなら現実的だろう」と未来を描きがちです。
それは安全で安心な選択ですが、過去の延長線上に同じような点を置き続けることに過ぎません。

コーチングでのゴール設定では、「今の自分には達成方法が見えない未来」を選ぶことが重視されます。
例えば、国内でしか働いたことがない人が、「世界中の人とオンラインで世界平和に向けて働く自分」を目指すといった具合です。

このとき、「どうやってそこに到達するか」は分からなくても構いません。
むしろ、分からないからこそ新しい情報を集めたり、異なる人に相談したり、新たな行動が生まれるのです。

現状の延長線を離れ、全く別の場所に未来の点を打ってみる。
その点に向かって時間が流れてくる感覚を持てるかどうかが、重要な分岐点となります。

「現状の延長線上ではない未来」を意識的に選び、そこに向かって行動を始めると、見える景色が少しずつ変わってきます。

これまで出会わなかったタイプの人とつながったり、目に留まらなかった情報が自然と入ってきたり、誘われる場所や声をかけられる内容が変わってきたりします。
気づけば、「あのときあの未来を選んだから、今の自分がいるんだ」と感じる瞬間が訪れます。

その頃には、「過去に引きずられて生きている」という感覚よりも、「未来に導かれながら今を生きている」という感覚が強くなっているでしょう。
それこそが、時間が「未来から現在へ、そして過去へ」と流れているという感覚なのかもしれません。

ここまで読んでくださったあなたは、すでに「未来の選び方」について意識を向け始めています。
それは小さく見えても、とても大きな一歩です。

過去にこだわるのではなく、これから自由に選べる未来を基準にして今を生きる。
そのためには、どんな未来をゴールとして設定するのかを、自分の意志で決めることが不可欠です。

時間は、今日も同じ速さで流れ続けています。
その時間を、過去の延長線の確認に使うのか、それとも、望む未来への道筋として使うのか。
その選択は、常にあなたの手の中にあります。

「時間は未来から過去へ流れている」という視点を持つと、ゴール設定の重要性が単なる理屈ではなく、「ああ、たしかにそうかもしれない」と感覚として腑に落ちてきます。
未来をどう選ぶかが、今をどう生きるか、そして過去をどんな思い出にするかを決めていく。
そのことを、日々の中で静かに思い出していただけたら嬉しいです。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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