あなたは今、どんな未来に向かって歩いていますか?
「いつか理想の自分になりたい」「もっと自由な働き方をしたい」「健康でエネルギッシュに過ごしたい」──そんな願いを持っている人は多いでしょう。
しかし、願いを持っているにもかかわらず、日々の行動がなかなか変わらないことがあります。
やると決めたはずなのに、つい後回しにしてしまう。
新しいことを始めようとしても、どこか重たさを感じて動けない。
もし、あなたにもそんな経験があるとしたら、それは意志が弱いからではありません。
鍵となるのは「臨場感」──つまり、どちらの未来を”よりリアル”に感じているか、という感覚の問題なのです。
「今の自分」と「未来の自分」の綱引き
人は、頭の中に一度に一つのまとまり(ゲシュタルト)しか強く保持できないと言われます。
だからこそ私たちの中では、常に「今の現実」と「未来のゴール」が、見えない綱引きをしています。
例えば、「健康的な体になりたい」と思っていても、目の前にあるケーキが魅力的に見えてしまう。
「資格を取りたい」と決意しても、帰宅後のソファの心地よさに負けてしまう。
これは、現状のほうが「リアル」に感じられているからです。
臨場感が勝ったほうが、日々の選択や行動を引っ張り、結果として「現実」になっていきます。
つまり、設定したゴールへ向かうために重要なのは、根性や気合いよりも先に、ゴール側の臨場感を高めることです。
現状の臨場感よりも、ゴールの臨場感を上回る必要があります。
現状のほうがリアルに感じられているうちは、「やる」と決めても行動が重くなりやすいのです。
反対に、ゴールのほうがリアルになるほど、自然とそちらへ動けるようになります。
「未来の記憶」をつくると、行動が軽くなる
ここでポイントになるのが、ゴールを達成した未来を「あたかもすでに達成しているかのように」頭の中で描くことです。
これをコーチングでは「未来の記憶をつくる」と表現します。
ゴールそのものは抽象度が高く、臨場感を出しにくいことがあります。
たとえば「もっと自由に働きたい」「人の役に立ちたい」「理想の健康状態になりたい」といった願いは、方向性としては素晴らしい反面、具体的な映像にしづらいものです。
そこで、ゴールそのものではなく「達成している自分の姿」を描きます。
未来のあなたを、映像として思い出せるくらいまで具体化できると、臨場感が一気に上がります。
ここで自分に問いかけてみてください。
あなたのゴールが達成された未来では、あなたはどんな一日を過ごしていますか?
朝、どんな気持ちで目覚め、どんな場所にいて、誰と一緒に過ごしていますか?
その姿を、ぼんやりとでもイメージできたなら、それが「未来の記憶」の第一歩です。
未来の自分を”映画のワンシーン”として描く
未来の記憶をつくるときは、映画を撮るように想像してみてください。
あなたは監督であり、同時に主演でもあります。
まずは、未来のワンシーンを設定します。
どんな場所で、誰と一緒にいて、どんな状態で、何をしているのか。
これを丁寧に描くほど、臨場感が育ちます。
大切なのは正確さよりも、「その場にいる感じ」が出ることです。
たとえば仕事のゴールなら──
- 自宅の書斎で落ち着いて仕事をしているのか
- コワーキングスペースで仲間とプロジェクトを進めているのか
- あるいは旅先のラウンジで余裕をもって打ち合わせをしているのか
クライアントとの会話のテンポや、あなたの表情、机の上の道具、窓から見える景色まで思い描けると、未来が「作り話」ではなく「予定」に変わっていきます。
健康のゴールなら──
- 朝、軽やかに起きて身体がよく動く自分
- 鏡の前で表情が明るく、姿勢も良い自分
- 外に出たときの空気を気持ちよく感じている自分
こうした細部を描くほど、その未来は”記憶”として脳に刻まれていきます。
イメージが苦手でも大丈夫──旅行の準備と同じ
「未来をイメージしましょう」と言われると、難しく感じる方もいるかもしれません。
ですが実は、私たちは日常の中ですでに同じことをやっています。
分かりやすい例が旅行です。
旅行に行くと決めたら、自然と現地の雰囲気を調べたくなります。
街並みを眺めたり、名所をチェックしたり、その土地の歴史や文化を知りたくなったりします。
行ったことがないのに、何度も眺めているうちに「なんとなく分かる」「行った気がする」という感覚が生まれてきます。
この状態こそが、臨場感が高まっている状態です。
臨場感が上がるほど、準備は進み、必要な情報が目に入り、行動が軽くなります。
「持っていく服を選ぶ」「現地のレストランを調べる」といった行動が、義務ではなくワクワクする準備になりますよね。
ゴールもまったく同じです。
未来の場面を何度も思い出すことで、未来は現実味を帯び、あなたの選択がゴール側に揃い始めます。
今日からできる小さな実践
未来の記憶づくりは、長時間やる必要はありません。
むしろ、短くても”繰り返す”ことが効果的です。
今日から始められる実践をご紹介します。
1. 未来の「ある朝」を描く
あなたのゴールが達成された未来の、ある朝の場面を具体的に描いてみてください。
どこで目覚め、どんな気持ちで起き上がり、誰と朝食を取り、何を考えていますか?
その場面を、30秒でも1分でも、静かに味わってみましょう。
2. 繰り返し思い出す
一度描いた場面を、一日に何度か思い出してください。
通勤中、昼休み、寝る前など、ふとした瞬間に未来の自分を「思い出す」ことで、臨場感は少しずつ育ちます。
3. 力まない
頑張ってリアルにしようとするほど、逆に現状の臨場感に引き戻されることがあります。
リラックスして、ぼんやりでもいいので、未来のワンシーンを味わってください。
繰り返すうちに、未来の臨場感が育ち、「その未来が当たり前」という感覚が根づいていきます。
未来の臨場感が、今日の一歩を自然に前へ進める
ゴールへ向かう力は、歯を食いしばる努力だけから生まれるわけではありません。
「その未来にいる自分」が当たり前に感じられるようになると、今日の選択が自然と変わり始めます。
これまでなら避けていたことに、なぜか挑戦してみたくなる。
必要な情報が、自然と目に入ってくる。
以前は億劫だったことが、なぜか軽くできるようになる。
それは、未来の臨場感があなたの背中を押しているからです。
あなたの心から望むゴールは、どんな姿をしていますか?
その未来を、今日から少しずつ「思い出し」始めてみてください。
未来の臨場感が育つほど、あなたは自然とその未来へと歩み始めていることに気づくはずです。
