複数ゴールを整えるライフ設計術

ゴールを設定すると、私たちはそのまま突き進むことに安心感を覚えがちです。
しかし、ゴールが近づくにつれて緊張感が薄れ、そこに向かうエネルギーも徐々に減少します。
さらに厄介なのは、そのゴールが実は自分の本心ではなく、周囲の期待や評価に基づいて選んだものであると後から気づくことです。
このままでは修正のきっかけを見つけにくく、努力するほど違和感が増していきます。
だからこそ、定期的に「ゴールの見直し」を行い、現在の自分に合うように調整する時間が必要です。

人生は仕事だけで成り立っているわけではありません。
健康、家族や友人との関係、学びやキャリアの成長、趣味や休養、経済や資産、地域や社会への関わりなど、さまざまな領域が互いに影響し合っています。
どれか一つに偏ると短期的には成果が出ても、他の領域での負担が蓄積し、中長期的なパフォーマンスを低下させます。
逆に、各領域にゴールを持ち、緩やかな連携が生まれると、エネルギーが循環し、基盤が安定します。
仕事の集中が健康的な生活リズムに支えられ、家族との時間が回復と創造性の源になる、といった具合です。

まずは、心にあるゴールをそのまま書き出してみましょう。
紙でもスマホのメモでも構いません。
大小の区別は不要で、思いつくままに並べます。
次に、それらを静かに眺め、関係性に目を向けます。
あるゴールは別のゴールの一部に見えるかもしれませんし、逆に大枠として包含しているように感じるかもしれません。
補い合う関係なのか、順番を入れ替えると前に進みやすくなるのか、といった問いを投げかけながら見ていきます。
「方法がまだ分からない」という不安が出てきても心配はいりません。
方法は、臨場感が高まるほど後から見えてくることが多いからです。

ゲシュタルトとは、ばらばらの要素をひとつのまとまりとして感じる、脳のまとめ上げる力です。
棚卸しの締めくくりに、各ゴールが実現している場面を短い映像として心に浮かべます。
出社前のリビングでランニングを終えた自分が落ち着いた呼吸をしている瞬間、プロジェクトの発表でチームの笑顔と拍手に包まれる瞬間、月末に家族で食卓を囲み「今月もよく頑張ったね」と笑い合う瞬間。
映像は数十秒で十分です。
コツは細部をひとつだけ鮮明にすること。
靴ひもの肌ざわり、スライドの表紙の手触り、味噌汁の湯気の立ち方。
ひとつが鮮明になると周囲が自然につながり、未来の手触りが強まります。

「海外MBAに行きたい」という夢と「子どもが小さいうちは日本で暮らしたい」という希望は、一見すると相反するように思えます。
しかし、どちらかを諦めると心にわだかまりが残るでしょう。
まずは両方の願いを棚に上げておき、それぞれの未来を具体的にイメージしてみましょう。
家族で海外のキャンパスを歩く姿を想像したり、日本にいながら国際的なプロジェクトを進める自分を思い描いたりするのです。
そうしているうちに、社内留学制度やオンラインMBA、短期渡航の組み合わせ、数年後の海外移住に向けた語学や資金の準備といった「今できる最適な選択」が見えてくるでしょう。
統合は、十分なイメージが育ったときに自然に起こります。

進むべき道が見えないと感じたら、まずはイメージを鮮明にしてみてください。
臨場感が増すほど、解決策は自然と見えてきます。
矛盾に不安を感じたら、急いで解決しようとせず、そのまま持ち続けてみましょう。
その緊張感がエネルギーとなり、ある日突然、解決の糸口が見つかることがあります。
続けるのが難しいときは、自分を責めるのではなく、イメージをより鮮明にしてみましょう。
毎朝、ほんの一瞬でも構いません。
靴紐や本の表紙、湯気の一つをその日だけは鮮明にすることで、モチベーションが途切れにくくなります。

棚卸しの目的は、完璧な計画を立てることではありません。
今の自分に正直でありながら、未来の自分にエネルギーを渡すことです。
複数のゴールを定期的に見直し、関係性を柔軟に整え、短いイメージで全体像を育てる。
方法は後から必ず追いついてきます。
安心して進んでください。
主役は常に、あなた自身です。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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