私たちは一見同じ風景を見ているようで、実際には異なる世界を生きています。
朝の通勤電車で隣に座る二人が同じ広告を見ても、一人はやる気を感じ、もう一人はプレッシャーを感じるかもしれません。
見たり聞いたり感じたりするものは同じでも、その「意味」は人それぞれ異なります。
この違いを生むのは、脳に備わる“フィルター”の働きです。
私たちは膨大な情報を受け取りますが、すべてを処理することはできません。
そこで脳は「自分にとって重要」と判断したものに焦点を当て、それ以外を背景にします。
最近欲しいと思っている靴の広告が目に留まったり、新しく覚えた言葉を頻繁に見かけるのは、このフィルターの働きによるものです。
つまり、あなたが「重要だと思うもの」で、あなたの世界は形作られています。
「好きなことをして、好きな未来をつくる」。
これは特別な人だけの特権ではありません。
あなた自身が、自分の人生という物語の主役です。
主役であるという自覚は、日々の小さな選択に現れます。
たとえば、会議で意見が分かれたとき、ただ空気を読んで合わせるのか、自分の考えを丁寧に伝えるのか。
こうした日常の選択の積み重ねが、静かに未来を変えていきます。
具体的な場面を想像してみましょう。
チームの新しい提案に対して、同僚のAさんは「リスクが多い」と感じ、Bさんは「可能性が大きい」と感じる。
Aさんは過去の失敗を重視し、Bさんは成長の機会に目を向けているのかもしれません。
どちらが正しいというわけではなく、フィルターの違いが結論を変えているのです。
自分のフィルターに気づくことは、主役として選択肢を増やす第一歩になります。
「自分をもっと大切にしていい」。
これは甘やかしではありません。
自分の感情や価値観を丁寧に受け止めることは、心の余裕を生み、結果的に他者への思いやりにつながります。
自分を否定していると、無意識に他者の考えも否定しがちです。
逆に、自分の考えを尊重できる人は、相手の考えの背景にも想像が及びます。
難しいことは必要ありません。
最初の一歩は、日常に短い「観察の時間」を取り入れることです。
朝の散歩や移動の数分で、目に入ったものを三つだけ心の中でラベル付けしてみます。
「気持ちが上向くもの」「不安が動くもの」「何も感じないもの」。
そのあとに、上向くものの共通点を一言にまとめます。
たとえば「自然」「清潔さ」「達成感」といった具合です。
これだけで、自分のフィルターの癖が少し見えてきます。
もうひとつの実践は、寝る前に一日の「良かった瞬間」を一場面だけ思い出すこと。
誰かに親切にしてもらった、作業に集中できた、景色がきれいだった。
小さな出来事で構いません。
場面の色や音、体の感覚まで思い出すと、脳のスポットライトが「大切にしたいもの」に再調整され、翌日の選択が変わります。
こうしてフィルターの向きを少しずつ整えることが、好きな未来をつくる力になります。
「他者の幸せが自分の幸せ」という感覚は、単なる理想論ではありません。
人間は社会的な生き物であり、周囲の人々の表情や雰囲気に大きく影響されます。
職場で誰かが笑顔になると、その隣の人の緊張が和らぎ、会話が増え、アイデアが生まれやすくなります。
家族の誰かが安心して過ごしていると、家庭の雰囲気が和やかになり、自分自身の心身の回復も早まります。
自分を大切にすることと他者の考えを尊重することは、互いに支え合う関係です。
あなたが整うほど、周囲も整い、その環境が再びあなたを支えてくれます。
世界は一人ひとり異なり、その違いは「何を大切にするか」で決まります。
あなたは自分の人生の主役として、自分の視点を少しずつ調整し、望む未来を描き直すことができます。
自分を大切にすることで、他者の考えも尊重でき、関わる人々との良い循環が生まれます。
今日できる小さな観察や振り返りから、その循環を始めてみましょう。