私たちが「今見ている世界」や「今感じている自分自身」は、過去の経験が脳内で重なり合って形成されたものです。
例えば、初めて自転車に乗ったときの不安や、受験勉強での緊張といった記憶が、現在の判断や感覚に影響を与えています。
こうした体験が少しずつ積み重なり、私たちの「いま」を形作っています。
心理学でいう「ネガティビティ・バイアス」は、ポジティブな出来事よりもネガティブな出来事が脳に強く刻まれやすい現象です。
この仕組みは、古代の人類が「危険を察知して生き延びる」ために発達させた防衛本能に由来すると考えられています。
実際、友人からの小さな叱責や過去の失敗は心に残りやすい一方で、褒められた経験はすぐに忘れてしまうことが多いのではないでしょうか。
「人間は脳の10%しか使っていない」とよく言われますが、実際には不明です。
脳科学の研究では、安静時にも多くの領域が常に活動しており、課題に応じて必要な部分を連携して使っていることがわかっています。
ただし、私たちが意識的に活用しているのはごく一部で、無意識下で情報処理や感情の制御を行う部分が大きく働いているとも言えます。
ネガティブな記憶に引きずられて自分の可能性を狭めていませんか。
むしろ、これまで乗り越えてきた困難や小さな成功体験に目を向け、強みとして受け止めることが大切です。
例えば、仕事で成功したプロジェクトや、友人に感謝されたエピソードを思い返すと、自分が積み上げてきた経験の豊かさに気づけるはずです。
また、そうした事実を声に出して言葉にするだけでも、自己肯定感は少しずつ変わっていきます。
毎晩、ベッドに入る前にその日にあった「良かったこと」を三つ選んで静かに振り返ってみましょう。
また、週末には、忙しさから離れて一週間を振り返る時間を取り、自分の成長した瞬間や乗り越えた困難をじっくりと味わってください。
こうした振り返りと挑戦の積み重ねが、ネガティブバイアスから抜け出し、脳の潜在能力をより豊かに引き出してくれます。
過去の記憶に縛られるのではなく、今こそ自分自身を大胆に評価し、新しい可能性へと踏み出しましょう。
あなたの未来は、まだまだ大きく広がっています。