「やりたいことを考えようとすると、頭が空白になる」
「ゴールを書き出そうとしても、義務や期待の言葉しか浮かんでこない」
「夢を語ろうとしたとき、”現実的に考えれば”という声が先に出てくる」
もしあなたがそう感じているなら、それは想像力が乏しいからではありません。
「本当に望むゴール」が見えにくくなるのには、脳の仕組みに由来する理由があるのです。
前回、want toのゴールがエネルギーと創造性を生み出すことをお伝えしました。
今日は、そのwant toのゴールをどうやって見つけ、設定するかを整理します。
なぜ「やりたいこと」が思い浮かばないのか──have toで塗り固められたゴールの罠
「夢は何ですか」と聞かれたとき、すぐに答えられる人は多くありません。
それは夢がないのではなく、本音のゴールがhave toの層に埋もれてしまっているからです。
幼い頃から、私たちは数えきれないほどの「こうあるべき」を受け取ってきました。
「安定した仕事に就くべき」「結果を出して評価されるべき」「他の人に迷惑をかけてはいけない」「もっと現実的に考えるべき」。
こうした言葉は、親や学校や社会から繰り返し届き、セルフトークの中に溶け込んでいきます。
そしてやがて、「これが自分のゴールだ」と思っているものの多くが、実は誰かの期待の反映になっているのです。
セルフトークは自己イメージをつくります。
そして自己イメージは、「自分にとっての当たり前」の範囲を決めます。
だから「やりたいことを考えて」と言われても、出てくるのはhave toの言葉ばかり。
本音のゴールは、スコトーマの奥に隠れてしまっているのです。
ゴールに必要な2つの条件──want toであること、現状の外にあること
では、どんなゴールが「本当のゴール」といえるのでしょうか。
有効なゴールには、二つの条件があります。
一つ目は、want toであること。
have toのゴール──「やらなければならない」「やらないと怒られる」「周りに認められたい」──は、達成しても充実感が続きません。
UNIT09でお伝えしたように、have toでは脳はエネルギーを消耗するだけで、創造性も生まれにくい。
ゴールは「やらなければ」ではなく、「やりたくてたまらない」から始まる必要があります。
二つ目は、現状の外にあること。
「今の自分でも達成できそう」なゴールは、脳を大きく動かしません。
RASは、今の自己イメージの範囲内の情報しか拾わず、創造的な解決策も生まれにくい。
本当のゴールとは、今の自分のコンフォートゾーンの外側にあるものです。
考えたときに「本当にできるのだろうか」という感覚が生まれるくらい、先にある。
しかし同時に、「もしそこに到達できたら、最高だ」というワクワクがある。
この二つが重なるとき、脳はゴールをリアルに受け取り、創造性のスイッチを入れ始めます。
現状の外のゴールとはどういうことか──「一段先」ではなく、「別の世界」
「現状の外」と聞くと、少し背伸びすれば届く場所のように思えるかもしれません。
しかし、現状の外とは「今の延長線上のちょっと先」ではありません。
今の自己イメージを基準に考えると、どんなに頑張ってもその自己イメージに引っ張られ続けます。
「今の自分が少し成長した姿」がゴールである限り、コンフォートゾーンは少しずつしか動きません。
現状の外のゴールとは、「今の自分の常識では考えにくい、別の世界の話」です。
UNIT06でお伝えしたように、コンフォートゾーンの引っ越しが起きるのは、ゴール側の臨場感が現状を上回ったときです。
そのためには、ゴールは「今の自分から想像できる範囲」を超えている必要があります。
「今よりもっと稼ぎたい」ではなく、「どんな仕事を、どんな人と、どんな場所でしているか」。
「もう少し健康になりたい」ではなく、「どんな身体で、どんな毎日を生きているか」。
映像として思い描けるくらい具体的で、今の自分には少し信じがたいくらいのゴール。
それが、脳を大きく動かすゴールです。
ゴールの見つけ方──「制約がなければ何をするか」から始める
では、具体的にどうやってゴールを見つければいいのでしょうか。
最初に試してほしいのは、制約を外した問いかけです。
「もしお金が無限にあったら、何をしているか」
「もし失敗しないと分かっていたら、何に挑戦するか」
「誰にも評価されなくていいなら、何に時間を使いたいか」
「10年後、最高に充実した一日はどんな一日か」
これらの問いに対して、すぐに浮かぶ答えを大切にしてください。
「現実的じゃない」「でもそれは難しい」という声が内側から聞こえたとしても、いったん置いておく。
スコトーマが外れるかどうかは、先にゴールを置けるかどうかにかかっています。
ゴールを先に決めることで、RASがそれに関連する情報を拾い始めるのです。
問いかけに答えが浮かばないなら、これまでの人生で夢中になったことを振り返るのも有効です。
子どもの頃、時間を忘れて没頭したこと。
大人になってからも、誰かに頼まれなくても自然に取り組んでいること。
そこにwant toのゴールの種があることが多いのです。
ゴールは複数持っていい──人生の複数領域をカバーするゴールの持ち方
ゴール設定でよくある誤解が、「ゴールは一つに絞らなければならない」というものです。
しかし、人生は一つの領域だけで成り立っているわけではありません。
仕事・健康・家族・人間関係・知的な学び・遊びや趣味・社会との関わり。
それぞれの領域にゴールがあることで、どれか一つがうまくいかなくても、他の領域のエネルギーが補ってくれます。
また、一つの領域だけにゴールが偏ると、他の領域が「手段」になりやすくなります。
仕事だけにゴールを置くと、健康や人間関係がそのための消耗品になりかねません。
複数の領域にwant toのゴールを持つことで、エネルギーの源泉が複数生まれます。
ゴールがエネルギーを生み出す。
それが複数の領域にあるなら、どこにいても「向かいたい場所」がある状態になるのです。
ゴールの数は多くても構いません。
大切なのは、それぞれがhave toではなく、want toであること。
そして、今の自分のコンフォートゾーンの外側にあること。
その条件さえ満たしていれば、脳は複数のゴールに向けて自然と動き始めます。
冒頭でお伝えした、「ゴールを考えようとしても頭が空白になる」「義務や期待の言葉しか浮かんでこない」「現実的にという声が先に出る」という体験。
その原因は、長年のhave toがwant toの声を覆い隠してきたことにありました。
しかし、制約を外した問いかけをすることで、本音のゴールは少しずつ姿を現します。
それがwant toであり、現状の外にあるとき、脳はRASを通じて世界の見え方を変え、創造性のスイッチを入れ始めます。
ゴール設定は、「何をやるかを決める」作業ではありません。
「どんな自分として生きるか」を選ぶ行為なのです。
