ゴール達成に欠かせない「臨場感」とは

ゴールを達成するためには、単にゴールを紙に書いて眺めるだけでは不十分です。
重要なのは、「ゴール側の臨場感」をどれだけ強く持てるかという点です。

ここで言う臨場感とは、まるで「そのゴールをすでに達成し、その世界に生きている自分」を実感することです。
頭の中でぼんやりと浮かぶ理想像ではなく、空気の雰囲気や身体の感覚、そこにいるときの感情まで伴った生き生きとしたイメージです。

この臨場感の感覚が強まるほど、日々の選択や行動は自然とゴールに向かって進んでいきます。
逆に、臨場感が欠けるゴールは、「あればいいな」という願望で終わってしまうことが多いです。

とはいえ、まだ経験したことのない未来の世界に、最初から強い臨場感を持つのは簡単ではありません。
私たちの脳は、「未知の世界」をそのままリアルにイメージするのが得意ではないからです。

行ったことのない国の匂いや空気、やったことのない仕事の感覚、会ったことのない人との会話の雰囲気を、いきなり細部まで想像しようとしても、どこか作りもののように感じてしまいます。
たとえば、まだ独立したことがない人が「独立して自由に働く自分の一日」を細かく描こうとすると、「本当にこんなふうになるのかな」と、少し現実味に欠けて感じられることがあります。

その結果、「やってみたいゴール」を頭の中で描いても、どこかでブレーキがかかり、「やっぱり無理かもしれない」というセルフトークが出てきてしまうのです。

ここで役立つのが、「ゲシュタルト能力」と呼ばれる人間の認知の働きです。
少し難しそうな言葉ですが、イメージとしては「バラバラの経験や記憶を組み合わせて、ひとつのまとまったイメージを作り出す力」と捉えてみてください。

ジグソーパズルを思い出すとわかりやすいかもしれません。
すべてのピースがそろっていなくても、いくつかのピースがつながると、「これは海の絵になりそうだ」「ここは空の部分だな」といった全体像が見えてきます。
それと同じように、まだ経験していない未来の世界も、今までの似たような体験や感情を組み合わせることで、かなりリアルに感じられるようになります。

たとえば、「海外のカフェで自然に英語を使って仕事をしている自分」という未来を描きたいとします。
このとき、「海外で仕事をした経験」がなくても、過去の旅行で感じたワクワク感、自分の好きなカフェで集中して作業していたときの心地よさ、英語が少し通じたときのうれしさ、といった既に持っている記憶を集めてつなぎ合わせることで、その未来のイメージに温度と感情を与えることができます。

これが、ゲシュタルト能力を使って、未知の世界へのリアルな感覚をつくっていくということです。

では、どのようにして臨場感を高めることができるのでしょうか。
その第一歩は、日常生活の中で自分の感情を少し意識して観察することです。

日々の中には、さまざまな小さな感情の動きがあります。
仕事がうまくいって思わず笑顔になった瞬間、誰かに「ありがとう」と言われて心が温かくなった瞬間、朝の空気が心地よくて「今日はいい日になりそうだ」と感じた時間、趣味に没頭して気づけば時間があっという間に過ぎていた経験。
これらの瞬間はすべて「臨場感を生む素材」になります。

重要なのは、「嬉しい」「楽しい」といった言葉で終わらせず、もう一歩踏み込むことです。
例えば、胸が軽くなったような感覚があったのか、体が少し前のめりになっていたのか、視界が明るく開けたように感じたのか。
こうした身体の感覚を、そのまま記憶に留めておきます。

難しいことをする必要はありません。
通勤中やお風呂に浸かっているときに、「今日少し嬉しかったことは何だったかな」「どんな感覚だったかな」と振り返るだけで十分です。
そうすることで、あなたの内側に「ポジティブな感情の蓄積」が少しずつ増えていきます。

次のステップは、蓄積したポジティブな感情の体感を、ゴールのイメージに重ね合わせることです。

例えば、あなたのゴールが「自分の専門性を活かして、多くの人に価値を届ける仕事をする」ことだとします。
このゴールを思い浮かべるとき、単に「セミナーで話している自分」「オンラインで講座をしている自分」という映像だけを見ていると、どこか他人事のように感じられるかもしれません。

そこで、先ほどのポジティブな感情の記憶が役立ちます。
誰かに感謝の言葉をもらったときの胸が温かくなる感覚、うまく説明できて「わかった!」と言ってもらえたときの爽快感、好きなことを話していて「楽しい!もっと話したい」と感じたときの前向きなエネルギー。
こうした体感を、セミナーや講座をしている自分のイメージに重ねていきます。

ただ「話している姿」を想像するだけでなく、そのときの呼吸の深さ、声のトーン、相手の表情、自分の心の中にある落ち着きやワクワク感などを、できる限り思い浮かべてみてください。
映像だったイメージが、少しずつ「体験」に変わっていく感覚が生まれます。
これが、ゴール側に対する臨場感が高まっている状態です。

ここで重要な点があります。
それは、ゴールを選ぶ際の基準です。
多くの人は無意識に「今の自分にできるかどうか」を基準にしてしまいます。
年齢や経歴、現在の仕事や家庭の状況を考慮し、「現実的に考えてこのくらいが妥当だろう」とゴールを決めてしまうことが多いのです。

しかし、「できるかどうか」でゴールを選ぶと、過去の延長線上の発想になりがちです。
過去の経験から「これは得意」「これは苦手」「ここまでは大丈夫」といった制限が、ゴールの大きさや内容を決めてしまいます。
その結果、心のどこかで本当はもっと違う未来を望んでいても、そこには手を伸ばさないまま時間が過ぎてしまうことになります。

そこで意識してほしいのが、「やりたいかどうか」で判断する基準です。
「うまくいくかどうか」「周りにどう思われるか」といった条件は一旦脇に置き、「もし制限がないとしたら、自分は何を選びたいだろう」と自分に問いかけてみてください。
この問いに素直に向き合うと、心の中でふっと明るくなるような感覚や、少しドキドキするような前向きな緊張感が生まれることがあります。
それが、「やりたいゴール」に気づき始めているサインです。

この「やりたい」という感覚は、臨場感を高めるときの大きな味方になります。
本当にやりたいゴールであればあるほど、そこに感情を込めたときのエネルギーも強くなり、日常の選択も少しずつ変わり始めます。

こうしたゴールの描き方や臨場感の高め方は、一度きりの大きな決断として行う必要はありません。
むしろ、日々の中でできる小さな「確認」の積み重ねとして捉えると、取り組みやすくなります。

たとえば、夜寝る前や一日の区切りのタイミングで、次のように自分に問いかけてみてください。
「今考えているゴールは、本当に自分がやりたいことだろうか」「そのゴールを思い浮かべたとき、体は前向きな感覚になっているだろうか」「その未来で感じたい気持ちを、今日のどこかで既に味わっていなかっただろうか」。
こうした問いかけをほんの数分でも続けていくことで、ゴールと日常の感情が少しずつつながり始めます。

あなたの中には、すでにたくさんのポジティブな感情の記憶や体感が眠っています。
それらを丁寧にすくい上げ、未来のゴールのイメージに重ねていくことで、未知の世界だったはずのゴールが、少しずつ「自分にとって当たり前の未来」に変わっていきます。
何ができるかではなく、何をやりたいのか。その感覚を大切にしながら、ゴール側の臨場感を育てていってください。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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