変わろうとするほど引き戻される──ホメオスタシスを味方につける方法

「新しいやり方に切り替えたのに、気づくと前のやり方に戻っている自分がいる」
「前向きに動き出した直後に、なぜか不安や迷いが急に押し寄せてくる」
「ゴール側の自分をイメージできた日ほど、翌日に『やっぱり無理だ』という声が強くなる」

もしあなたがそう感じているなら、それは意志が弱いからではありません。

実は、あなたの脳と体に備わった「現状維持装置」──ホメオスタシスが、変化を元に戻そうとしているのです。

前回、エフィカシーがゴール達成の土台になることをお伝えしました。
しかし、エフィカシーを高め、コンフォートゾーンを移動させようとしても、そこには強力な引き戻しの力が待っていることがあります。

今日は、その引き戻しの正体であるホメオスタシスを理解し、味方につける方法を整理します。

目次

なぜ「変わろう」と決めたのに、気づけば元の自分に戻っているのか

心機一転して立てたゴール。新しく始めた早起き。ゴールに向けた行動計画。

始めたときはやる気に満ちていたのに、数日、数週間と経つうちに、いつの間にか元の生活に戻っている。

「自分は結局、何も変えられない人間なんだ」

そう感じたことがある人は、少なくないはずです。

しかし、これは「あなたが変われない人間だから」ではありません。
脳と体が、全力であなたを元の状態に戻そうとしているのです。

この力を理解せずに変わろうとすることは、強い逆風の中を無理やり進もうとするようなものです。
逆風の正体を知り、その風を味方にする方法を知ることで、前進の仕方はまったく変わります。

ホメオスタシスの仕組み──身体だけでなくマインドにも働く現状維持装置

この「元に戻す力」を、ホメオスタシス(恒常性維持機能)と呼びます。

ホメオスタシスは、もともと生理学の用語です。

体温が上がれば汗をかいて冷やす。
体温が下がれば体を震わせて温める。
血糖値が上がればインスリンを出して下げる。

このように、体の内部環境を一定の範囲に保つために、自動的に働く調整機能がホメオスタシスです。
ホメオスタシスのおかげで、私たちは外部環境が変わっても体の状態を安定させ、生命を維持できています。

つまり、ホメオスタシスはあなたを守るために存在しているのです。

しかし、ここからが重要なポイントです。

ホメオスタシスは、体だけでなくマインドにも働いています

自己イメージ、ブリーフシステム、コンフォートゾーン──これらが「現状の基準点」を形成しています。
そしてホメオスタシスは、この基準点から離れようとする変化に対して、自動的に元に戻す力を働かせます。

新しい行動を始めると、「やっぱり自分には合わない」というセルフトークが湧いてくる。
ゴールに向かって前進すると、なぜか不安やモチベーションの低下が起きる。
良い変化が起きているのに、「こんなにうまくいくはずがない」と感じてしまう。

これらはすべて、ホメオスタシスが「元の自分」に戻そうとしている反応です。

身体のホメオスタシスが体温を一定に保とうとするように、マインドのホメオスタシスは自己イメージを一定に保とうとしているのです。

だからこそ、意志の力だけで変わろうとしても難しい。
ホメオスタシスは、意志よりもはるかに強力な自動システムだからです。

ホメオスタシスがコンフォートゾーンを固定し、変化を阻む構造

これまでお伝えしてきたコンフォートゾーンの話を、ホメオスタシスの視点で見直してみましょう。

コンフォートゾーンの外に出ると違和感が生まれ、元に戻されてしまう。
これは、ホメオスタシスがコンフォートゾーンの基準点を守ろうとしているからです。

ホメオスタシスにとって、コンフォートゾーンの基準点は「正常値」です。
体温の正常値が36.5度であるように、自己イメージや生活パターンにも「正常値」がある。

そこから離れると、ホメオスタシスが発動し、元に戻す力が働きます。

ダイエットで体重が減ると、体が食欲を増やして元に戻そうとする──これは身体のホメオスタシス。
新しい挑戦を始めると、「やっぱり自分には無理だ」というセルフトークが増える──これはマインドのホメオスタシス。

変わろうとするほど、引き戻す力も強くなる。

これが、「頑張っているのに変われない」の本当のメカニズムです。

ホメオスタシスの力を知らずに意志の力だけで戦えば、いずれ疲弊して元に戻ってしまいます。
だからこそ、ホメオスタシスと戦うのではなく、ホメオスタシスの仕組みを活かす必要があるのです。

ホメオスタシスと戦わない──基準点そのものを移動させる発想

ホメオスタシスを味方にする方法は、実はシンプルです。

基準点そのものを、ゴール側に移動させればいい。

ホメオスタシスは「基準点に戻す力」です。
その基準点が「現状」であれば、変化するたびに現状に引き戻されます。

しかし、基準点が「ゴール側」に移動したらどうでしょうか。

今度は、ホメオスタシスがゴール側の状態を維持しようとする力に変わります。
現状に戻ろうとすると、逆に違和感が生まれ、ゴール側に引き戻される。

これが、コンフォートゾーンの引っ越しです。

引っ越しが完了すると、新しい状態が「正常値」になります。
ホメオスタシスは、今度は新しい正常値を守るために働きます。

つまり、かつて変化を妨げていたホメオスタシスが、変化を維持する力に転換するのです。

ホメオスタシスと正面から戦っても勝てません。
しかし、基準点を移動させれば、ホメオスタシスはあなたの最強の味方になります。

want toのゴールとエフィカシーが、新しい基準点をつくる

では、基準点を移動させるには何が必要でしょうか。

それは、これまでお伝えしてきた二つの要素です。

一つ目は、want toのゴール。

have toのゴールでは、基準点は移動しません。
義務感で無理に変わろうとしても、ホメオスタシスの引き戻す力に勝てないからです。

しかし、want to──心から望むゴール──があると、ゴール側の臨場感が高まります。
ビジュアライゼーションでゴール側の自分を鮮明にイメージし、その状態を何度も体験することで、脳は「こちらが本来の自分だ」と認識し始めます。

すると、基準点がゴール側に移動し始め、ホメオスタシスの力が味方に変わるのです。

二つ目は、エフィカシー。

前回お伝えしたように、エフィカシーは「自分にはゴールを達成する能力がある」という自己評価です。

エフィカシーが高いと、ゴール側の自分を「当たり前」と感じやすくなります。
「当たり前」と感じるからこそ、そこが新しい基準点になり、ホメオスタシスがその状態を守ろうとし始めます。

エフィカシーが低いままでは、ゴール側の自分を「自分にはふさわしくない」と感じてしまい、基準点は現状にとどまり続けます。

want toのゴールで基準点の方向を決め、エフィカシーで基準点を定着させる。

この二つが揃ったとき、ホメオスタシスはあなたの変化を支える力に生まれ変わるのです。


冒頭でお伝えした、「気づくと前のやり方に戻っている」「動き出した直後に不安が押し寄せる」「イメージできた翌日に『無理だ』の声が強くなる」という体験。
その原因は、ホメオスタシスが現状の基準点を守ろうとしていたことにありました。

しかし、ホメオスタシスは敵ではありません。
基準点をゴール側に移動させれば、今度はゴール側の状態を守るために働いてくれます。

want toのゴールを持ち、エフィカシーを育てることで、基準点は移動し始めます。
そのとき、変化に抵抗していたはずのホメオスタシスが、あなたの最も頼もしい味方に変わるのです。

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この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

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