後輩にはかけられる言葉を、自分にはかけられない

夕方、後輩が青い顔で席にやってきました。

「すみません、取引先への見積もり、金額を一桁間違えて送ってしまいました」

すぐに一緒に謝罪の連絡を入れ、訂正版を送り、なんとか事なきを得ました。
落ち込む後輩には、こう声をかけました。
「誰でも一度はやるよ。次に活かせば大丈夫」

その言葉に、嘘はありませんでした。本心からそう思っていたのです。

目次

自分の小さなミスには、「中堅なのに何やってるんだ」と言っていた

その日の夜、自宅で翌日の資料を見直していると、自分が送った会議の案内に日付の誤りを見つけました。
まだ誰も気づいていない、小さなミスです。

それなのに、頭の中で真っ先に響いたのはこんな言葉でした。
「中堅なのに、何やってるんだ」「こんなこともできないのか」

数時間前、後輩には「大丈夫」と言えた自分が、自分にだけは容赦がない。
その落差に、少しぞっとしました。

自分宛てのレビューに、毎日星1つをつけている

私たちは一日中、頭の中で自分に話しかけています。この心のつぶやきをセルフトークと呼びます。

後輩の仕事には、良いところを見つけて星4つをつけ、改善点をひとつ添える。
けれど自分の仕事には、できて当たり前の部分は数えず、足りない点だけを拾って星1つ。
中堅になると、そんなレビューを毎日のように自分に書いていないでしょうか。

「中堅なんだから当然」「もう若くないんだから」。
一つひとつは一瞬のつぶやきでも、積み重なれば、何千件もの低評価レビューになります。

繰り返された独り言は、いつの間にか「自分はこういう人間」になる

セルフトークが厄介なのは、繰り返されるほど、脳がそれを「事実」として受け入れていくことです。

星1つのレビューばかり読んでいると、どんなお店も「たいしたことない」と思えてくる。
脳も同じで、「自分はできていない」という言葉を毎日聞いていると、それが自分像として定着します。

すると新しい役割を前にしても「自分には荷が重い」と感じ、手が止まる。結果が出ないことで、また星1つのレビューが増えていく。静かな悪循環です。

後輩にかけた言葉を、そのまま自分にも言ってみた

翌朝、日付の訂正の連絡を入れたあと、昨日後輩にかけた言葉を、心の中で自分にも言ってみました。
「誰でも一度はやる。次に活かせば大丈夫」

正直、少し照れくさかった。けれど不思議と肩の力が抜けて、そのあとの仕事にすっと集中できました。

大切なのは、ただ自分を甘やかすことではありません。基準は、**「未来の自分にふさわしい言葉かどうか」**です。
チームを育てるリーダーになりたいなら、まず自分を育てる言葉を選ぶ。後輩にかける言葉と自分にかける言葉が近づくほど、その言葉には重みが生まれます。

自分を育てる言葉を、自分で選ぶ

厳しい言葉が、すべて悪いわけではありません。
ただ、それが自分を伸ばす言葉なのか、削る言葉なのかは、自分で選び直すことができます。

後輩に「次に活かせば大丈夫」と言えるのは、その人の未来を信じているからです。
同じまなざしを、自分にも向けていい。自分との1on1を少しやさしくするだけで、明日の自分の動き方が変わってきます。


一日でいちばん多く話している相手は、上司でも後輩でもなく、自分自身です。

明日から5分だけ、試してみませんか。
自分を責める言葉が浮かんだら、「これを後輩に言うだろうか」と一度だけ問いかけ、後輩にかけるはずの言葉に言い換えてみる。
その一言が、自分宛てのレビューに、少しずつ星を増やしていきます。

次回は、言葉を変えはじめたときにやってくる、むずがゆい「違和感」の正体についてお話しします。

よかったらシェアしてください!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

苫米地式コーチング認定コーチ/苫米地式コーチング認定教育コーチ/TICEコーチ/PX2ファシリテーター。 苫米地英人博士から指導を受け、青山龍ヘッドマスターコーチからコーチングの実践を学び、世界へコーチングを広げる活動を実施中。あなたのゴール達成に向けて強力にサポートします。

目次