きょう、自分にどんな言葉をかけた?
会議を出たあと、「あの言い方はまずかったな」とつぶやく。
後輩を見送ったあと、「もっとうまく伝えられたはずだ」と考えている。
布団に入ってからも、「なんであのとき、引き受けちゃったんだろう」を繰り返している。
そんな小さなつぶやき、ないかな。
その相手は、いつだって自分自身だ。
そして、その言葉の積み重ねが、明日のあなたを少しずつかたちづくっていく。
一番おしゃべりしてる相手は、誰だろう
あなたが一日でいちばん多く会話している相手は、誰だと思う?
家族でも、上司でも、チームのメンバーでもない。
自分自身なんだ。
朝起きてから夜眠るまで、わたしたちは数えきれないほど、頭の中で自分に話しかけている。
「あの案件、間に合うかな」
「さっきの返し方、雑だったな」
「もう少し準備しておけばよかった」
ほとんど無意識のうちに流れていく、心の中のおしゃべり。
それが、あなたと自分との”日常会話”なんだ。
その声、いつから採点係になったんだろう
おもしろいのは、その声のくせが、年数とともに変わっていくこと。
入社したてのころは、こうだった。
「自分にはまだできない」「早く追いつかないと」
でも今は、少し違うんじゃないかな。
「もっとちゃんとやれたはずだ」
「この歳で、こんなことでつまずくなんて」
できることが増えたぶん、基準も上がっている。
だからその声は、できた部分を数えるより、足りなかった部分を拾うほうに働く。
ひとつひとつは、小さな独り言だ。口にも出さない、軽い思いつきみたいな言葉。
でも、同じ言葉を何百回、何千回と繰り返すうちに、心はそれを「自分のこと」として静かに受け取っていく。
そうやって積もった言葉が、次の行動を選ぶときの基準になっていくんだ。
後輩には、かけてあげられるのに
ここで、ひとつ思い出してみてほしい。
落ち込んでいる後輩に、あなたはどんな言葉をかけている?
「だいじょうぶ、よくやってるよ」
「そこまで気にしなくていい」
「ここまで来てるんだから、十分だよ」
たぶん、するっと出てくるはずだ。
やさしい言葉のストックを、あなたはもう十分に持っている。
ふしぎなのは、そのストックを、自分には一度も使っていないこと。
同じつまずきを後輩がしたら「気にしなくていい」と言えるのに、
自分がやると「なんであんなことを」と、何日も再生してしまう。
でもほんとうは、いちばん長く一緒にいる自分にこそ、その言葉を渡していいんだ。
「自分らしくない」で、流れを切りかえる
厳しいつぶやきを、ゼロにする必要はない。
それは心の自然な動きで、無理に止めようとすると、かえって疲れてしまう。
そんなときに使える、やさしいひと言がある。
それは──
「これは、自分らしくないな」
「またダメだった」と浮かんできたら、
心の中でそっと「いや、これは自分らしくない」と添えてみる。
たったそれだけで、自動で流れていた言葉のループに、小さなブレーキがかかる。
完璧じゃなくてだいじょうぶ。
気づいたときに、ひとつ添える。それで十分なんだ。
その関係を、きょうからあたためていこう
言葉を変えるのは、自分に甘くなることじゃない。
ここまで来た自分をちゃんと認めて、そのうえで次を選んでいくことなんだ。
毎日の小さな独り言を、少しだけやわらかいものに変えていく。
後輩に渡している言葉を、ひとつだけ、自分にも回してみる。
そうしているうちに、心の中の厳しい上司は、少しずつ頼れる味方に変わっていく。
きょうから、ほんの少しだけ。
自分に聞いてみてほしい。
「きょうの自分に、どんな言葉をかけていたかな」
「後輩にかけているあの言葉、自分にも言ってあげられるかな」
答えはあいまいでかまわない。
あなたが一番長く一緒にいる相手は、自分自身。
その関係を、きょうからそっとあたためていこう。
