会議の冒頭で「この事業で実現したいこと」を読み上げるようになって、チームの空気は少しずつ変わってきました。
ある日、ネットで見つけた社外の勉強会の案内に、目が留まりました。
テーマは、現場の働き方を変えるサービスづくり。まさに、自分がやりたいことそのものです。
「この事業が軌道に乗ったら、こういう場にも出てみよう」
そう思って、案内のページをブックマークしました。それが、3か月前のことです。
落ち着いたら、の次には、また別の「落ち着いたら」が来ていた
この3か月、何もしなかったわけではありません。
試作の改善、予算の申請、メンバーの増員。毎週のように新しい課題がやってきて、そのたびに「これが片づいたら」と思っていました。
けれど、ひとつ片づくと、すぐに次がやってくる。
家では、子どもの習い事の送り迎えも始まりました。「子どもがもう少し大きくなったら」という声も、いつの間にか加わっていたのです。
中堅になると、責任は減るどころか、重なっていきます。
「落ち着いたら」を待っていると、その日はなかなかやってきません。
空いている電車を待っていたら、いつまでも乗れない
朝のラッシュの時間帯を思い浮かべてみてください。
「次はもう少し空いているかもしれない」と、目の前の電車を何本も見送る。
けれど、混んでいる路線では、次の電車も、その次の電車も、やっぱり混んでいます。気づけば、遅刻ぎりぎりの時間になっている。
変わるタイミングも、これに似ています。
脳にとって**「いつか変わる」は、「今は変わらない」と同じ意味**です。
「いつか」に預けているかぎり、脳は今日も昨日と同じ自分を続けるのが正しいと判断し、いつもの毎日を繰り返します。
空いた電車を待つのではなく、来た電車に、まず一歩乗り込むこと。
立つ場所は、乗ってから探せばいいのです。
「いつか」を、「すでにそうなりつつある」に言い換えてみた
そこで、心の中の言葉を少し変えてみました。
「いつか、現場の働き方を変える人になりたい」ではなく、「自分は、すでに現場の働き方を変えはじめている」。
時制を未来から現在に移すと、脳はゴール側の自分を「いまの自分」として扱いはじめます。
すると、「その人なら、今どうするだろう」という問いが、自然と浮かぶようになりました。
「ゴール側の自分なら、今日何を選ぶ?」で、小さな一歩を決めた
ゴール側の自分なら、勉強会のページをブックマークしたまま、3か月も放っておかない。
けれど、家族の予定を崩してまで、毎週出かけるわけでもない。
出てきた答えは、「次回の勉強会に、オンラインで一度だけ参加する」でした。
事情は何も変わっていません。それでも、今日この一つは選べる。
申し込みボタンを押した瞬間、3か月間ずっと胸の奥にあった重さが、すっと軽くなりました。
その週の1on1では、後輩にも「やりたいことは、落ち着く前に一つ始めていいんだよ」と話せました。
ゴール側の自分は、今日から始められる
大きく変わる必要はありません。今日、一つの選択だけ、ゴール側の自分として選ぶ。それが、未来を「いつか」から「今日」へ引き寄せる、いちばん確かな方法です。
「落ち着いたら」と思ってきたのは、あなたがそれだけ多くの責任を引き受けてきたからです。その事情を抱えたままでも、ゴール側の自分は、今日から始められます。
明日から5分だけ、試してみませんか。
「落ち着いたらやろう」と思っていることを一つ選び、「ゴール側の自分なら、今日何をするか」を一行だけ書いてみる。
その一行が、目の前の電車に乗り込む一歩になります。
次回は、進みはじめたゴールが、ふと色あせて見えてきたときの話をします。
