入社したての頃、通勤路の景色まで違って見えたのを覚えていますか。
オフィスの入口も、朝のエレベーターも、初めて配られた名刺も、どこか特別なものに見えた。
それが3年、4年と経つうちに、同じ道、同じ顔ぶれ、同じ会議に戻っていきます。
「この会社、そろそろ学ぶことがなくなってきたかもしれない」
帰りの電車で転職サイトを眺めながら、そんなことを考える日がある。
その感覚、本当でしょうか。
同じ会議に出ていたのに、拾っている情報が違った
先週の会議を思い出してみてください。何が印象に残っていますか。
長引いた議論、上司の言い方、早く終わらせたいという気持ち。
そんな記憶が浮かんだとしたら、それがいまのあなたのフィルターです。
同じ会議に出ていた同期は、まったく別のものを持ち帰っているかもしれません。
「あの部署、来期から新しい取り組みを始めるらしい」
「あの人の資料のまとめ方、真似できそうだ」
差をつけているのは環境ではありません。何が見えているかです。
能力や経験の差でもない。同じ会議室にいても、脳が拾う情報が違えば、持ち帰るものは変わります。
「その案件、面白いですよね」と言った後輩の一言
ある日、後輩にこう言われました。「先週の共有会で出ていた案件、面白いですよね」
……そんな話、あっただろうか。
議事録を開くと、たしかに書いてあります。自分もその場にいました。
それなのに、まるで存在しなかったかのように、記憶に残っていない。
目には入っていたのに、脳が「いまの自分には関係ない」と判断して、意識に上げなかったのです。
この見えない盲点をスコトーマと呼びます。
「この職場には何もない」が、フィルターのサインだった
「もう学ぶことがない」と感じるのは、職場が空っぽになったからではありません。
フィルターが古いままになっているサインかもしれません。
入社したてのワクワクが薄れたのも、会社がつまらなくなったからではなく、脳が「いつも通り」のモードに戻っただけ。
見えていないものは、存在しないのと同じ。だから「何もない」と感じてしまいます。
やってみたいことを決めた途端、社内の情報が目に入りはじめた
脳の中には、情報の門番のような働きがあります(RASと呼ばれます)。
何を意識に上げるかを選ぶ役割で、判断の基準はシンプルです。「自分にとって重要かどうか」。
イメージとしては、SNSのおすすめ表示に近いかもしれません。
自分が反応したものに合わせて、次に流れてくる情報が変わっていく。あれと同じことが、脳の中でも起きています。
そして「何が重要か」を決めているのは、上司でも会社でもなく、いまの自分が置いているゴールです。
「あの領域の仕事をやってみたい」と決めた途端、他部署の雑談から関連する話が耳に入るようになった。
そんな経験があれば、それは門番がフィルターを切り替えたサインです。
見たい景色を、自分の側から選び直す
見える世界を変える、いちばんシンプルな方法はやってみたいことをひとつ、意識に上げることです。
「この一年で、自分は何を実現していたいか」
「いまの環境を使いこなせたとしたら、どんな自分になっていたいか」
やり方は、まだ分からなくて構いません。
ゴールを言葉にしたあとに、脳が関連する情報を拾いはじめるからです。
「チャンスがない」と感じる日があるとき、変えるべきは環境ではなく、脳のフィルターかもしれません。
今日の帰り道で、ひとつだけ試してみませんか。
スマホのメモに、「一年後、こうなっていたい」を一行だけ書いてみる。
それだけで、昨日まで通り過ぎていた景色の中から、あなたのための情報が、少しずつ姿を現しはじめます。
次回は、その一歩を踏み出そうとしたときに顔を出す「なんとなく苦手」の正体についてお話しします。
