進路希望調査のプリントが配られた。
第一希望の欄を前に、ペンが止まる。放課後になっても、空白のまま埋まらない。
「やりたいことを書こうとすると、頭が真っ白になる」
「夢を書こうとした瞬間、『現実的に考えれば』という声が先に出てくる」
想像力が乏しいわけじゃない。
「本当にやりたいこと」が見えにくくなるのには、ちゃんと理由があるんだ。
「やるべきこと」ならいくらでも書けるのに
不思議なことに、「やるべきこと」なら、いくらでも書ける。
「次のテストで順位を上げる」「提出物を出す」「単語を覚える」。
「やりたいこと」を聞かれると固まるのに、「やるべきこと」はすらすら出てくる。
これは、夢がないわけじゃない。
本音のゴールが、have to(やらなければならない)の層に埋もれているだけなんだ。
「〜すべき」が、本音の声を覆っていた
小さい頃から、私たちは数えきれないほどの「こうあるべき」を受け取ってきた。
「いい高校・いい大学に行くべき」「安定した仕事に就くべき」「もっと現実的に考えるべき」。
こうした言葉は繰り返し届いて、いつの間にか自分の独り言に溶け込んでいく。
だから「やりたいことを考えて」と言われても、出てくるのはhave toの言葉ばかり。
本音のゴールは、奥に隠れたままになっている。
じゃあ、どんなゴールが「本当のゴール」なんだろう。条件は二つ。
ひとつ目は、want to(心からやりたい)であること。
「やらないと怒られる」から始まるゴールは、達成しても充実感が続かない。
ふたつ目は、現状の外にあること。
「今の自分でも達成できそう」なゴールは、脳を大きく動かさない。
「今の成績で行けそうな学校」ではなく、「どんな場所で、どんな仲間と、どんな毎日を送っていたいか」。
「本当にできるのかな」という感覚と、「もし到達できたら最高だ」というワクワクが、同時にあるくらいがちょうどいい。
「もし絶対に失敗しないなら?」と問い直してみた
本音のゴールを掘り起こすために、試してほしいのが制約を外した問いかけだ。
- 「もしお金も学力も関係ないなら、何をしたい?」
- 「もし絶対に失敗しないと分かっていたら、何に挑戦する?」
- 「誰にも評価されなくていいなら、何に時間を使いたい?」
- 「10年後、最高に充実した一日って、どんな一日?」
これらの問いに、すぐ浮かんだ答えを大切にしてほしい。
「現実的じゃない」という声が湧いてきても、いったん横に置いておく。
その声は、以前の記事で話した「外から入り込んだ言葉」かもしれないから。
小さい頃、夢中になったことを思い出す
問いに答えが浮かばないなら、これまでの人生で夢中になったことをふり返るのも有効だ。
誰にも頼まれていないのに、時間を忘れて取り組んでいたこと。
絵を描くこと、生き物を調べること、ゲームの攻略法を考えること、友達を笑わせること。
「そんなの仕事にならない」と思うかもしれない。
でも、そこにあるのは正真正銘のwant to。本音のゴールの種は、そういう場所に埋まっている。
進路希望調査の欄が埋まらない。
その原因は、長年の「〜すべき」が、本音のゴールの声を覆い隠していたことにあった。
大切なのは、最初から完璧なゴールを描こうとしないこと。
「まだ曖昧だけど、こんな未来に惹かれる」という仮のゴールで構わない。
完璧なゴールを探して立ち止まるより、仮であっても決めて動き出す。
ゴールが決まれば、脳のフィルター(RAS)が切り替わって、関連する情報が目に入り始める(以前の記事で話した仕組みだ)。
そこから出てきた言葉が、これからの景色を変える、最初のゴールになる。
