新生活が始まり、仕事や学業に全力を傾けてしばらく経つ。
予定もタスクもこなせている。それなのに、ふとした瞬間に、こんな感覚に出会うことはないでしょうか。
「目の前の仕事には全力を出せるのに、休日になると何をしたいのか分からない」
「ふと気づくと、仕事以外の話題で盛り上がれる相手がいなくなっていた」
「このまま走り続けて、どこに着くんだろう──そんな疑問が浮かぶ」
ゴールの設定が間違っていたわけではありません。
実は、ゴールが人生の一部分だけに偏っていることが、充実感を妨げているのかもしれないのです。
これまで、want toのゴールが人生を動かす話を重ねてきました。
今日はもう一つの視点、ゴールを「どの領域に」設定するかを整理します。
新生活で、休日になると何をしたいかわからない
ゴール設定の大切さを理解し、実践している人でも、陥りやすい落とし穴があります。
ゴールを一つの分野にだけ設定してしまうことです。
最も多いのは、仕事やキャリアにゴールが集中するケース。
「自分にしかできない仕事をしたい」「世の中に意味のある価値を届けたい」「人生をかけられる仕事に出会いたい」
こうしたゴールは大切です。
しかし、仕事のゴールだけを追いかけていると、やがて不思議なことが起きます。
仕事の手応えは積み上がっているのに、週末に何もする気が起きない。
新しい同期や友人と話していても、仕事の話題が尽きると会話が途切れる。
「最近どう?」と聞かれて、仕事の報告しか出てこない自分に気づく。
新生活は、仕事や役割の比重が一気に上がる時期。
だからこそ、人生全体のバランスが崩れているサインも、強く出やすいのです。
ゴールがない領域は、無意識のうちに停滞していく
ゴールが一つの分野に集中すると、マインドの仕組みもその分野にだけ集中します。
RASは仕事に関する情報ばかりを拾い、健康や人間関係に関する情報はスコトーマに入ってしまう。
セルフトークも仕事中心になり、他の領域での自己イメージは更新されないまま放置される。
コンフォートゾーンの引っ越しも仕事の領域でしか起きず、他の領域は過去のままにとどまる。
その結果、ゴールのない領域は、無意識のうちに停滞するのです。
健康にゴールがなければ、「まあ大丈夫だろう」と現状維持になる。
人間関係にゴールがなければ、「忙しいから仕方ない」と後回しになる。
趣味にゴールがなければ、「そんな時間はない」と切り捨てられる。
ゴールがない領域では、脳は新しい情報を探さず、コンフォートゾーンも動かず、変化は起きません。
一つの分野だけが前に進み、他が止まったまま。
この人生の歪みが、漠然とした不安や空虚感の正体です。
新生活で「忙しいのに、どこか満たされない」と感じる人の多くが、ここにぶつかっています。
バランスホイール──人生を複数の領域で見渡す
この偏りを解消するために役立つのが、バランスホイールという考え方です。
バランスホイールとは、人生をいくつかの重要な領域に分け、それぞれにゴールを設定するフレームワークのこと。
たとえば、次のような領域があります。
- 仕事・キャリア:どんな働き方をしていたいか
- お金・経済:どんな経済状態を実現したいか
- 健康・身体:どんな健康状態でありたいか
- 家族・パートナー:大切な人とどんな関係を築きたいか
- 人間関係・社会:どんな人たちと関わっていたいか
- 学び・自己成長:何を学び、どう成長していたいか
- 趣味・遊び:何を楽しみ、どんな体験をしていたいか
- 社会貢献・使命:社会に対してどんな価値を届けたいか
これらの領域を「車輪のスポーク」に見立てます。
すべてのスポークがバランスよく伸びていれば、車輪は滑らかに回ります。
一部だけが突出していると、車輪はいびつになり、人生全体がガタガタと揺れてしまう。
新生活は、生活そのものを組み直すタイミング。
車輪をどう描き直すかを、自分で選び直せる貴重な時期でもあります。
すべての領域にwant toを置くと、全部が加速する
バランスホイールでゴールを設定するとき、最も大切なのはすべての領域でwant toのゴールを持つことです。
「仕事には情熱があるけれど、健康管理は仕方なくやっている」
「家族のことは義務感で対応している」
こうした状態だと、have toの領域がエネルギーを奪い、want toの領域にも影響が出ます。
逆に、すべての領域で「こうなりたい」と心から思えるゴールがあると、領域同士がエネルギーを補い合うようになります。
仕事での充実が家族との関係を豊かにし、健康であることが仕事のパフォーマンスを上げ、趣味が新しい発想を生み、学びがキャリアの可能性を広げる。
一つの領域でのゴール達成が、他の領域への推進力になる。
バランスホイールが回り始めると、人生全体が一つの流れとして前に進み始めるのです。
そして大切なのは、各領域のゴールも「現状の外側」に置くこと。
「今より少し健康になればいい」では、RASのフィルターは切り替わりません。
「心身ともに最高の状態で、毎日を過ごしている自分」「家族と深い信頼関係を築き、互いに成長し合っている自分」──このくらいの、別の世界の話として描けるゴールが必要です。
完璧なゴールを最初から描く必要はありません。
仮のゴールで構わないので、すべての領域に「現状の外側」のwant toゴールを置く。
それだけで、人生全体のマインドの仕組みが動き始めます。
「そんなに多くの領域にゴールを持ったら、エネルギーが分散するのでは?」と思うかもしれません。
しかし、実際にはその逆です。
人生全体にwant toのゴールを持つ人のほうが、結果的にすべてを加速させます。
バランスホイールが回り始めると、各領域のゴールが互いに影響し合い、全体のエネルギーが増幅される。
RAS、セルフトーク、エフィカシー、コンフォートゾーン、ホメオスタシス──マインドの仕組みすべてが、人生全体で機能するようになっていくのです。
冒頭の、「休日になると何をしたいのか分からない」「仕事以外の話題で盛り上がれる相手がいない」「このまま走り続けてどこに着くんだろう」という体験。
その原因は、ゴールが人生の一部分に偏っていたことにありました。
新生活は、車輪を描き直せるタイミング。
すべての領域にwant toのゴールを置き、現状の外側に設定する。
そのとき、人生のあらゆる領域でマインドの仕組みが動き出し、一つの領域の前進が他の領域を引き上げ、新生活は一つの大きな流れとして進み始めます。
